基本的な考え方・方針

アイシンは、生産活動において、さまざまな部品や原材料を世界各国の多数のサプライヤーから供給いただいています。取引にあたっては、良きビジネスパートナーとして共存共栄することを基本理念に、サプライヤーとの信頼関係の構築に取り組んでいます。「長期安定取引を前提としたサプライヤーとの共存共栄」「オープンでフェアな取引の遂行」の精神のもと、サプライチェーン全体で持続可能な調達活動を推進するため、「調達基本方針」をグローバルに展開しています。

推進体制

グループ調達本部は、サステナビリティ会議をはじめとする社内の各委員会、推進会議に属しており、それらの主管部署ならびに関連部署と連携しながら、サプライヤーに対する窓口として各種施策を推進しています。また、国内グループ会社とは段階的に機能統合を進めるとともに、海外各地域では統括拠点の調達機能と密に連携し、サプライヤーに対し統一した調達方針の展開や、課題の吸い上げ・解決活動を行っています。

サプライチェーン推進の体制図

サプライチェーン推進の体制図

国内外のグループ会社での調達基本方針の推進

アイシンは、サプライヤーとの共存共栄の考えに基づき、相互に発展を図っていきたいと考えています。この基本方針に基づき、グループ調達方針を定め、調達活動を推進しています。2024年度はグローバル主要地域である日本・北米・欧州・中国・アジア・インドで「調達方針説明会」を実施し、昨今の環境動向を共有するとともに、グループ調達方針を展開しています。

各地域における取引依存度の高いサプライヤーを招待(日本750社、海外1,011社)

グループのサプライチェーン

国内外すべてのグループ会社が直接取引している1次サプライヤーの数は、部品サプライヤーで2,914社、部品以外のサプライヤーを加えると4,431社です。

グローバルサプライヤー数

(単位:社)

  部品 原材料その他
日本国内 1,099 1,213 2,312
海外 1,815 304 2,119
2,914 1,517 4,431

戦略

事業環境・商品構成等の大きな変化の中、サプライチェーン全体の競争力強化と社会課題解決に努めています。
継続的なベンチマーク、自社の立ち位置の把握、ベストプラクティス導入のサイクルを回し、競争力の原資である、「品質・コスト・スピード」の強化を行います。

主な取り組み

オープンでフェアな調達活動

アイシンでは、新たなサプライヤーとの取引にあたり、ISO9001・IATF16949やISO14001認証の取得状況調査、品質監査などを実施した上で取引を開始し、その後も関連部署と協業して品質・安全・環境・耐震・サイバーセキュリティなどの点検を継続して実施しています。
サプライヤーとは、オープンでフェアな精神に則り、競争法や贈収賄防止、反社会的勢力の排除などの法令遵守に加え、安全衛生・公害防止などへの留意を明記した取引基本契約書を取り交わし、公正な調達活動を推進しています。
また、サプライチェーン全体の共存共栄や、望ましい取引慣行の遵守などを明記した「パートナーシップ構築宣言」を2020年6月に公表しています。その具体的な取り組みの一つとして、2024年1月に取引適正化を推進する専門組織を設立しました。特に労務費、原材料価格、物流費、エネルギーコスト等の上昇に対して、すべてのサプライヤーに対して一社一社丁寧にコミュニケーションを取り、適正な価格転嫁を実施しています。
また、サプライヤーが相談・要請しづらい立場であることを踏まえ、主要サプライヤーへ定期的にアンケートを実施し、アイシン社員のコンプライアンスに関する実態や、各社様の困りごとを確認しています。アンケート結果に基づき、調達部員が直接サプライヤーを訪問し、生の声をヒアリングするなど、本音のコミュニケーションと積極的なサポートができる体制を構築しています。

社会課題の解決に向けて、グループ調達本部では2025年5月にサステナビリティ推進を担う新組織を設立しました。カーボンニュートラルを含むグリーン調達の推進に加え、人権(外国人就労を含む)やサイバーセキュリティなどの社会課題に対して、サプライヤーの皆さまと連携しながら取り組みを進めています。

パートナーシップ構築宣言

リスクの把握とサプライヤーと一体になった対応力強化

お客様の信頼と期待に応え続けるために、すべての1次部品サプライヤーを対象に品質マニュアル「購入部品 仕入先品質保証実施基準書」(以下、SQAM)を制定し、以降、定期的な見直しを実施しています。1次サプライヤーには、2次以降のサプライヤーにも品質の維持・向上を図るため、支援の実施をお願いしています。
お客様の要求品質を満たす部品を納入いただいていることを継続的に確認するために、432社を対象に1回/3年の頻度で、SQAMや国際品質保証規格IATF16949への適合を網羅したチェックシートに基づく自己点検や現地監査を実施しています。
品質目標の達成状況や要求品質の高い保安部品などのリスク分析により、2024年度は2次サプライヤーも含めて75社実施し、改善が完了するまでサポートをしています。
また、2024年度は品質体質改善活動を前年度からの継続を含めた53社と活動しました。その結果、20社の品質評価(当社基準)が1ランク向上しています。
資材1次サプライヤーには、アイシンの製品がお客様に満足されることをねらい、「購入資材仕入先品質保証実施基準書」を制定しています。購入材料の含有物質(成分)については、社内基準に基づき、材料に含まれる含有物質を管理し、定期的な確認を実施しています。
購入品の安定調達を脅かすリスク(自然災害、火災、地政学リスクなど)に対しては、専門組織を設置し、常日頃からタイムリーに情報をつかむ体制を構築しています。有事におけるリスク対応においては、生産拠点と対象品番の特定が最重要と考え、今年度新たなBCP管理システムを構築しました。サプライヤーから提供いただいた購入部品・原材料の製造工程に関する情報を登録・活用し、サプライチェーンを可視化して、初動と復旧対応を迅速に行っています。
レアアース・半導体を筆頭とする特にリスクが高いと認定された部品に関しては、在庫水準の見直しや、設計部署と協業で、開発初期段階において汎用性の高いものを採用する等の施策を取っています。
また、グループ調達本部の各部に先行調達を推進する組織を設置し、新製品の開発段階から関連部署と連携しながら、地政学リスクや供給不安に備えるとともに、競争力のある材料・部品を安定的に調達できるよう、戦略的な選定を進めています。

仕入先サステナビリティガイドライン

持続可能な社会の実現に向け、ESG課題への対応をより推進するため、要求事項をサプライヤー向けに構成した「アイシングループ仕入先サステナビリティガイドライン」を発行しています。サプライヤーの皆さまとの取引を通じて共に取り組みたいと考える基本的な事項をガイドラインで示し、主要サプライヤーへの説明会を実施し理解活動を推進しています。当ガイドラインを遵守いただける旨の確認書に、サプライヤーからご署名いただくことにより合意形成を図っています。2024年度には海外グループ会社にも展開し、海外サプライヤーへの理解・浸透を図っています。
また、「アイシングループグリーン調達ガイドライン」を発行することで温室効果ガスの削減、廃棄物を含めた資源循環、水保全、生物多様性の保全をサプライヤーに求めています。

サプライヤーとの相互研鑽

アイシンは、サプライヤーの技能向上や企業体質の強化を目的に、主要サプライヤーに対し人材育成支援を行っています。主要サプライヤーの後継者を基本2年間、希望する部署に受け入れる「子弟留学制度」をはじめ、ニーズに合わせ従業員の出向受け入れを実施しています。その他、アイシンのサプライヤーが相互研鑽や優良事例の横展開を目的に編成する協力会の活動を側面から支援し、生産性・品質向上を目指す諸活動および、安全・環境活動などへの助言を行っています。2024年度には、労働災害・火災の未然防止・サイバーセキュリティの強化、人権取り組みに関する勉強会や、サプライチェーン全体でのカーボンニュートラル達成に向けた相互研鑽会を実施しました。
サプライヤーのVA活動、旧型金型廃却活動、品質向上活動、ものづくり改善活動に伴走する専門組織をそれぞれ本部内に設置し、サプライヤーの意見を尊重しながら、現地・現物・現場にこだわったサプライヤー競争力の原資発掘取り組みを行っています。

カーボンニュートラル相互研鑽会
カーボンニュートラル相互研鑽会

従業員・研修

アイシンでは調達活動に従事する従業員一人ひとりが、公正で誠実な調達活動を推進できるよう、贈収賄の禁止をはじめ各種法令遵守に向けた具体的な行動を「グループ調達行動憲章および行動指針」として示し、その実践に必要な心得については、「調達のこころ」として冊子にまとめ、配属時の必須教育として理解を深めています。また、環境・カーボンニュートラル・人権・腐敗防止、競争法等関連法規、機密管理などに関する教育を、調達業務に従事する全従業員を対象に実施しています。

環境、人権に関するサプライヤーとの取り組みについては以下をご覧ください。