戦略

基本的な考え方

アイシンは、マテリアリティにおいて「自然との共生、持続可能な未来への貢献」を優先課題の一つに位置づけ、「バリューチェーン全体での環境負荷低減」をその実現に向けた方向性として定めています。事業活動が自然資本に依存し、影響を与えていることを正しく理解した上でリスクと機会の分析を行い、活動に反映しています。

アイシングループ生物多様性保全活動ガイドライン

2025年度に改定した「アイシングループ生物多様性保全活動ガイドライン」に基づき、3つの視点「依存の最適化」、「影響の最小化」、「協調の最大化」で事業活動と調和した生物多様性保全活動にアイシングループ一丸となって取り組んでいます。

水資源の循環・保全を軸とする生物多様性保全活動の方向性

2026年度TNFD図

3つの視点

  • 依存の最適化
    事業活動における自然からの恩恵(資源・生態系サービスなど)への過剰な依存を避け、最適な状態を目指す
  • 影響の最小化
    事業活動による自然への影響(排水・温室効果ガス排出・廃棄物など)をできる限り小さくする
  • 協調の最大化
    地域社会や生態系への積極的な貢献(植林、ビオトープ整備、環境教育など)を推進し、
    持続可能な社会の実現に寄与する

事業活動の場所に注目したLEAPアプローチ

バリューチェーン上下流の検討対象の考え方

バリューチェーン上下流の分析において、モビリティの電動化を支えるパワートレイン製品などに使用されるアルミ部品を分析対象に選定しました。さらに、バリューチェーン上下流を対象とした評価方法の確立を目的として、正確な場所の情報が収集できている1次サプライヤー(アルミ素材/部品製造)を上流、顧客(自動車製造)を下流の評価範囲とし、分析を行いました。

LEAPアプローチの検討フロー

Locate
自然との接点の発見
Evaluate
依存・インパクトの評価
Assess
重要なリスクと機会の評価
Prepare
対応と報告の準備
検討対象
  • 直接操業
  • 上流:1次サプライヤー
  • 下流:顧客
同左 同左 同左
検討内容
  • 活動場所の評価
  • 優先地域の特定
  • 依存・インパクトの評価
  • 妥当性の確認
  • 優先度の高い依存項目、インパクト項目の抽出
  • リスクと機会のリスト作成
  • シナリオ分析に基づくリスクと機会の定性的な重要度評価
  • リスク管理アプローチの整理
  • 戦略とリソースの割り当て
  • パフォーマンス測定
  • 情報開示の作成
アウトプット
  • 活動場所の評価結果
  • 優先地域の特定結果
  • 依存・インパクトの評価結果
  • 優先度の高い依存項目、インパクト項目リスト
  • リスクと機会のリスト
  • リスクと機会の定性的な重要度評価
  • シナリオ分析に基づく重要なリスクと機会のリスト
  • リスク管理戦略と軽減策
  • 対応:リスクと機会の分析結果を踏まえた2030年KPI・取り組みの策定
  • 報告:TNFD提言の開示推奨項目を照合した情報開示

Locate:自然との接点の発見

事業は活動場所で自然とつながっており、直面するリスクを特定、評価、回避、緩和、管理する上で活動場所の評価が重要です。Locateフェーズでは、生態系の完全性、生物多様性の重要性、水ストレス等の観点から、組織の活動場所の評価を行い、優先地域を特定します。

優先地域の選定方針

STEP1 対象拠点の位置情報のインポート

優先地域の選定方針
優先地域の選定方針

STEP2 各指標の評価

優先地域の選定方針
優先地域の選定方針

STEP3 優先地域の選出

評価項目 評価ツール 評価指標
①生物多様性の重要性 IBAT※1 生物多様性の重要度の高い地域
(KBA、Natura2000、World Heritage、
Ramsar、ユネスコMAB、IUCN Management Ia~Ⅳ)
との近接性、拠点から半径5km圏内
②生態系の完全性 WWF Biodiversity Risk Filter※2 Ecosystem Condition
③水ストレス Aqueduct※3 Baseline water stress

IBAT:Integrated Biodiversity Assessment Tool、国連環境計画が開発した生物多様性リスク評価ツール

WWF Biodiversity Risk Filter:WWFが開発、バリューチェーン上の生物多様性のリスクと機会を把握するツール

Aqueduct:世界資源研究所が開発した水リスク評価のグローバルツール、拠点が立地する地域の水リスクを水量・水質・規制・評判の観点で評価

優先地域の選出結果

優先地域の選出結果

Evaluate:依存・インパクトの評価

事業活動の場所における依存・インパクトは、リスクと機会を理解する上での重要な前提条件となります。Evaluateフェーズでは、Locateフェーズで特定した優先地域において、事業活動と自然との依存・インパクトを特定し、分析します。組織が機能するために依存している生態系サービスの側面、組織の行動によって自然の変化をもたらすインパクト要因の側面について、それぞれENCORE※を用いて評価を実施しました。依存については、「供給サービス」「調整・維持サービス」「文化的サービス」の3つが挙げられます。また、インパクト要因については、「陸、淡水、海洋の利用変化」「資源の利用/補完」「気候変動」「汚染/汚染除去」「侵略的外来種の侵入/除去」の5つが挙げられます。これらのインパクト要因は、Science-Based Targets for NatureのTechnical Guidance for Step1 and Step2においても同様に定義されています。

ENCORE:Exploring Natural Capital Opportunities, Risks and Exposure、自然資本金融同盟などが開発した生物多様性と生態系サービスへの潜在的な依存と影響関係を評価するツール

セクターレベルの依存・インパクトの関係

セクターレベルの依存・インパクトの関係

Assess:重要なリスクと機会の評価

LocateとEvaluateの各フェーズにおける検討結果を踏まえ、バリューチェーン全体のリスクと機会の重要度評価を行いました。

リスク

⾃然関連リスクを評価する上で、「定義」はバリューチェーン上の組織や社会の⾃然への依存・インパクトに関連して、⾃組織にもたらされる潜在的な脅威とし、⼤きく物理的リスク・移⾏リスクの二つに分類しました。「発⽣条件」はバリューチェーンで⾏われる活動が⾃然(⽣態系サービス)に依存している、あるいは、⾃然に対してインパクトを及ぼしていることとしました。重要度評価は「発⽣可能性」と「財務影響」の2軸で評価し、各リスクの重要度を検討しました。

機会

⾃然関連の機会を評価する上で、「定義」はバリューチェーンにおいて⾃然にプラスの影響を与えるか(再⽣)、⾃然へのマイナスの影響を軽減すること(回避・低減)により、⾃組織と⾃然にプラスの結果をもたらす⾃組織の活動としました。「発⽣経路」は①⽣態系サービスの劣化に伴う⾃然関連のリスクをバリューチェーン上の組織および⾃組織が回避、軽減、緩和、または管理する場合、②⾃組織におけるビジネスモデル、製品、サービス、市場、投資の戦略的変⾰を通じて、バリューチェーン上の活動に伴う⾃然の喪失の抑制や、⾃然に基づく解決策の実施または融資や保険による⽀援などを行う場合としました。重要度評価は「発⽣可能性」と「財務影響」の2軸で評価し、各機会の重要度を検討しました。

Prepare:対応と報告の準備

評価したリスクと機会のうち、重要度が高いものについては、「アイシン環境取組プラン2030」にて指標(KPI)と取り組み内容を定めて対応を進めていきます。

自然関連のリスクと機会および2030年に向けた対応

区分 リスク/
機会の
種類
影響段階 アイシンへの影響 発生
可能性※1
(高・中・低)
財務影響※2
(大・中・小)
2030年に
向けた対応
物理的リスク 規制 直接操業 給水制限による、生産量の減少 高 中
  • 水使用量最小化
  • 生産設備、ユーティリティ設備のムダ・ロス排除による使用量の削減
  • 循環技術の導入促進
移行リスク 公共料金や処理費の上昇による、コストの増加(水) 高 中
資源循環の新たな動きに対応するための負担増加 中 中
  • 自工程・自工場での使い切りを基本とした資源有効活用
  • 歩留まり向上の追求(取り代最小化、不良率低減など)
  • 素形材事業を活かしたグループ内資源循環の促進
  • 市場回収を踏まえたリユース・リサイクルの促進
公共料金や処理費の上昇によるコストの増加(廃棄物) 高 中
  • 廃棄物の価値向上による排出量最小化
  • 分解・分別による有価化・再資源化の促進
  • 埋立処分脱却に向けた高度処理技術の確立
  • 国、地域の事情に合わせた方針設定と活動への落とし込み
基準の厳格化と超過による、罰則・罰金の発生(廃棄物) 中 中
市場 顧客からの環境対応要請の高まりによる、負担増加、売上減少(廃棄物) 中 中
顧客からの環境対応要請の高まりによる、負担増加、売上減少(汚染) 中 中
  • 環境マネジメント強化によるサプライチェーン全体での環境事故未然防⽌活動の強化
  • グループ統⼀標準の展開・定着による潜在リスク抽出と改善徹底
  • ISO14001統⼀認証導入による環境人材の力量向上
  • 各国、各地域の法規制動向を踏まえた化学物質管理徹底
評判 バリューチェーン上流 サプライヤーの環境負荷に対するステークホルダーからの批判を原因とした調達量の制限 中 中
機会 市場 直接操業 新たな規制に対する影響回避・対応力の向上(水) 中 中
  • 水使用量最小化
  • 生産設備、ユーティリティ設備のムダ・ロス排除による使用量の削減
  • 循環技術の導入促進
新たな規制に対する影響回避・対応力の向上(廃棄物) 中 中
  • 廃棄物の価値向上による排出量最小化
  • 分解・分別による有価化・再資源化の促進
  • 埋立処分脱却に向けた高度処理技術の確立
  • 国、地域の事情に合わせた方針設定と活動への落とし込み

発生可能性 高:~2026年度、中:~2030年度、低:~2050年度

財務影響  大:100億円以上、中:10億円以上100億円未満、小:10億円未満

リスクとインパクトの管理

環境委員会等は、全社的なリスク管理プロセスのもと、戦略で識別されたリスク及び機会への対応を協議・決定し、定期的に進捗をフォローしています。なお、対応策の検討にあたっては各国の法規制、ステークホルダーとの対話、顧客動向等を考慮しています。

測定指標とターゲット

2030年に向けた指標と取り組み

アイシンは、2030年に向けた自然共生分野の指標として“水資源の循環・保全を軸とした生物多様性保全の推進”を掲げた「アイシン環境取組プラン2030」を策定しました。指標の達成に向け、工場排水を活用した敷地内ビオトープの整備や湿地における田んぼづくり、水源地域における希少種の保護など、水資源と生態系のつながりを重視した活動に取り組んでいます。また、ビオトープを活用した環境学習や河川での生きもの観察会などを通じて、従業員およびその家族、地域の皆様とともに生物多様性への理解を深め、さらなる活動の拡大に取り組んでいます。さらに、日本国内における一部の取り組みは、活動の継続性や地域への貢献が評価され、自然共生サイトとして認定されています。