環境
基本的な考え方・方針
経営基盤となる環境に対する法遵守などの活動を土台とし、脱炭素・資源循環・自然共生等の「自然との共生、持続可能な未来への貢献」を優先課題に掲げています。グループで培ってきた自動車関連から建設・緑化、エネルギー分野に至るまでの幅広い製品群と、優れた技術力・サービスを活かして、地球環境の課題解決に貢献することで、未来地球に笑顔を運び続けたいと考えています。気候変動や資源枯渇などの環境問題に、従業員一人ひとりが真摯に向き合い、持続可能な環境を未来へつないでいくために、自然と調和し、誰もが安心して暮らせる社会の実現を目指しています。
“自然との共生、持続可能な未来への貢献”を実現する資源循環システム”
推進体制
環境に対する社会ニーズの高まりを踏まえ、脱炭素・資源循環・自然共生の戦略・企画から環境基盤活動までを一気通貫で推進するため、カーボンニュートラル・環境推進センターに改称し、体制を強化しました。
上位方針に基づき、環境基盤の構築、脱炭素・資源循環・自然共生に関する戦略の検討・推進・審議・モニタリングを目的として、「環境委員会」および「CN・CE推進会議」を定期的に開催することで、スピーディで柔軟な意思決定を行っています。
また、重要事項は取締役会で付議・報告し、必要に応じて事業戦略・計画を修正することで経営戦略の最適化を図っています。
会議体名 | 役割 | 主な出席者 |
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環境委員会 | 上位方針を踏まえた環境全般の基本方針の審議・展開 環境関連の業務執行の適正化とリスク最小化に向けたモニタリング |
グループ13社 社長 環境担当役員 |
CN・CE推進会議 | 脱炭素・資源循環・自然共生に対する戦略検討・推進 | グループ13社 環境担当役員 |
戦略
マテリアリティにおいて優先課題を「自然との共生、持続可能な未来への貢献」とし、「バリューチェーン全体での環境負荷低減」を実現に向けた方向性と定めています。具体的には「カーボンニュートラル(CN)」「サーキュラーエコノミー(CE)」をKGIとし、KPIを設定の上、取り組んでいます。
アイシンは、具体的な取り組みを示した5ヵ年ごとのアイシン連結環境取組プランを1993年より制定し、環境活動を進めてきました。2024年度は従来の延長線上ではなくアイシンとして独自の視点で環境課題に向き合うべく、将来のあるべき姿から逆算し「アイシン環境取組プラン2030」を策定しました。2025年を試行期間とし、2026年からの本格的な取り組みに向けて、グループ一丸となって活動を進めていきます。
関連するマテリアリティ
マテリアリティ | 目標(KGI) | 指標(KPI) | 2030年度目標値 | |
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優先課題 | 実現に向けた方向性 | |||
自然との共生、 持続可能な 未来への貢献 |
バリューチェーン 全体での 環境負荷低減 |
[カーボンニュートラル] 2050年 CN達成 2035年 生産CO2 CN達成 |
Scope1、2排出量 | 19年度比▲46.2% |
Scope3排出量 | 19年度比▲27.5% | |||
[サーキュラーエコノミー] 2040年ゼロエミ工場達成 (埋立廃棄物1%以下) |
資源の有効活用 | 10%効率化※ | ||
廃棄物最小化 廃棄物排出量 |
19年度比▲11% |
資源の有効活用 効率化:不要物排出量の低減率と不要物を資源としてグループ内で循環させる量の増加率との合計
主な取り組み
カーボンニュートラルに向けた取り組み
Scope1、2
徹底した省エネ活動や革新生産技術の開発・導入によるエネルギー使用量の削減を行っています。その上で電力については、太陽光発電や風力発電の導入など再生可能エネルギーへの切替を順次進めています。非電力については電化を進めつつ、CO2の分離・回収や利活用および新エネルギーへの代替を進めていきます。
省エネ活動の中でも、1つの製品を生産する際の各設備・動作ごとのエネルギー使用量を分析し、無駄を省く活動をグループ全体で強化しています。その中で「洗浄機の間欠運転化」が、一般財団法人省エネルギーセンターが主催する2024年度省エネ大賞において「省エネルギーセンター会長賞」を受賞しました。洗浄工程を小ロット化し、待機中の機器停止と、インバーター制御により、年間電力使用量を約27%削減しました(従来比12,453kWh減)。
また、担当役員が自ら国内外の工場を巡回し、CN・CEの取り組みを現地・現物で確認するとともに担当者と直接対話し、課題を吸い上げ、対策を講じています。今後も新たな省エネアイテムの創出と既存のアイテムをグループ内にとどまらず社外にも共有・実践し、社会全体のCO2削減に貢献していきます。

動力源・熱源の削減や無人化、超eco設備の開発・導入など、革新生産技術により生産能力を維持したままCO2排出量を削減しています。
今回、花王と共同開発した「常温防錆洗浄剤」が、国立研究開発法人国立環境研究所と株式会社日刊工業新聞社主催の第52回「環境賞」において「環境大臣賞」を受賞しました。「常温で洗浄できる高い洗浄力」、「熱風が不要な高い乾燥性」、「防錆処理不要な高い防錆効果」の3つの機能を兼ね揃え、従来の洗浄機1台当たり73%のCO2削減、防錆資材の削減が可能となりました。
また、洗浄液の使用期間延長により、水資源の使用量も3分の1以下に抑え、排水処理の負荷も軽減しました。

欧州地域では、アイシンの目標に先駆けて、2040年の「カーボンニュートラル」を長期的な目標として掲げています。その一歩として、「欧州全生産拠点での再生可能エネルギー100%」に向け、太陽光発電や風力発電を導入するなど再生可能エネルギーへの切替を進めてきました。2025年4月欧州地域生産子会社でトルコに拠点を置くAISIN OTOMOTIV PARCALARI SANAYI VE TICARET A.S.(イスタンブール市)は、トルコ国内に太陽光発電施設を建設しました。この施設での発電開始により、トルコを含む欧州地域の全生産拠点で再生可能エネルギー導入率が100%となりました。

アイシンは素形材を扱っており、熱を使った生産が多くScope1の削減に課題を持っています。アイシン高丘では、鉄の溶解工程に使用する石炭コークスの代替としてバイオ燃料「Bio-M-Coke」を開発しました。これまで自社の生産ラインで、100%バイオ成型炭に置換した実証実験を行い、通常通り安定した操業が可能であることを確認しました。並行して国内鋳造会社にて社外実証実験も進めており、2025年秋ごろより同商品の販売を開始する予定です。

Scope3
資源採掘から廃棄に至るまでのライフサイクル全体で排出されるCO2のうち、排出量の多い4つのカテゴリ(1・4・11・12)に重点を置いて削減活動を進めています。
具体的には、製品性能向上における使用段階でのCO2削減に加え、低CO2材の採用促進やサプライヤーへのCN活動支援、仕入先・輸送業者と連携して積載率向上やルートの最適化を図るなど、サプライチェーン全体でのCO2削減活動に取り組んでいます。これらの取り組みにより環境負荷の低減とともに、企業としての競争力強化にもつなげていきます。
開発初期段階からのCO2削減に取り組むため、製品設計にLCA(ライフサイクルアセスメント)を取り入れています。社内の算定ガイドラインに基づいた計算ツールを活用し、製品のLCAを定量的に評価しています。さらに、全社の教育体系にLCA教育を組み込み、従業員の理解および計算スキルの向上を図っています。開発初期段階で低CO2材の採用や製品の小型・軽量化を進めることで、製品ライフサイクル全体のCO2排出量を削減していきます。
取り組みが評価され、2025年3月CATARC(中国自動車技術研究センター)より低炭素サプライヤー評価ランク5に認定されています。
LCA (ライフサイクルアセスメント):製品やサービスのライフサイクル全体における環境負荷を定量的に評価

また、2021年度よりサプライヤーとともにサプライチェーンにおけるCO2排出量の削減に取り組んでおり、これまでCNの基本を学ぶ場である「CNベースキャンプ」、他社の取り組みや新しい情報を知る場としての「CNオープンキャンパス」、学んだことを実践し成果につなげる「CN活動支援」の3つの場を設け、継続して取り組んできました。2023年度からは当社工場とサプライヤーを業種ごとにマッチングし、現地・現物で好事例や活動を共有しながら学び合う体制を整え、サプライヤーとともに推進する体制を強化しています。今後も「誰一人取り残さない」をスローガンに、サプライヤーとの対話を通じ、サプライチェーン全体のCN活動を推進していきます。

材料使用量削減の取り組みの一つとして、リザーバータンク製造時に発生する樹脂ランナーを、グループ内の他製品にカスケード利用することを目指し取り組みを進めてきた結果、シート製品の中材に活用することができました。こういったランナーの再利用はグループ全体で行っており、資源をできるだけ小さなサイクルで循環させることにより、新材の購入量を削減し、排出されるCO2を極力小さくすることにも取り組んでいます。
サーキュラーエコノミーに向けた取り組み
2040年ゼロエミ工場の実現に向けて、資源の有効活用、廃棄物の最小化などの活動を進めています。また、サプライチェーン全体の資源循環の取り組みはScope3の抑制にも効果的です。原材料、副資材、生産設備、金型、治具、梱包資材等企業活動に関わるすべてのものを対象とし、分解・分別やエコデザインの推進を通じてリサイクル可能な状態へと転換し、再資源化を進めていきます。また、自社だけでは実現が困難なため、産官学連携やトヨタグループ内のタスクフォースへの参画を通じてリサイクル材の採用促進を行っていきます。
資源循環図
資源の有効活用
製品の軽量・小型化などでの材料使用量低減に加え、不要物低減、価値向上、副資材低減、新材・新品投入比率削減により資源の有効活用をしていきます。製品設計や生産技術開発の段階から端材や不要物が極力出ないよう開発し、製造工程でどうしても発生してしまう端材や切粉は再資源化や、廃棄物の分別による価値向上を進めています。
アイシン半田電子工場やアイシン東北では、製品を作る際に最初に作られる仕掛品に対して、正規品通り樹脂と金属を使用しており、金属の廃棄が発生していました。そこで、金属部分をリサイクル材で作ったダミー部品に置き換え、仕掛品にそれらを使用することで、金属の廃棄削減につなげました。このような改善事例を各工場・グループ会社へ展開しながら、グループ全体で資源の有効活用に取り組んでいます。
廃棄物の最小化
廃棄物の発生源対策や処理技術開発で埋立・産業廃棄物をマテリアル化する活動の中で、鋳物鋳造を行うアイシン高丘では、鋳造に使用した砂型から、リサイクルできず埋立処分となる廃棄物が全体の約5%発生していました。このリサイクル不可能な埋立廃棄物を分級し、異物を除去した上でセメントの原料として活用しました。その結果、前年比で8割のリサイクル化に成功しました。

その他の取り組み
水使用量削減
アイシンの事業活動は多くの自然資本に支えられており、環境負荷の低減が不可欠です。アイシンでは「水削減6則」を定め、水使用量の削減に取り組んでいます。特に「トメル」「サゲル」「カエル」「ヒロウ」を重点に、非稼働停止の徹底、水圧・流量の低減、水以外の工法への変更、排水のリサイクル、雨水・ドレン水利用等を実施しています。「カエル」の視点では、西尾ダイカスト工場で高温の金型に離型剤を塗布する際に、冷却用に水を使用しておりましたが、3D冷却金型化により効率的に金型を内部から冷やすことが可能となり、水の使用そのものを廃止することができました。また、ミスト上になった離型剤を回収・処理するため、従来は水を使用しておりましたが、特別なフィルターを使って処理することで、水を使用せずに回収できるようにしました。このような各工場の改善事例の展開を推進し、水使用量の削減に取り組んでいます。
自然共生
アイシンでは「水域保全」「地域ステークホルダーと連携した活動」「生態系ネットワーク構築への貢献」の3つを柱とした自然共生活動を推進しています。2024年度は、多くの拠点で実施されている工場周辺の清掃活動に加え、植林・植樹、希少種の保護・外来種の駆除、河川・海岸清掃など、グローバルに自然共生活動を展開しました。また、2030年度までに80万本の植樹を目指す「GREEN&BLUEプロジェクト」では、2024年度までに累計359,000本の植樹を達成しました。
上記の3つの柱すべてを満たす拠点を「アイシングループの自然と共生する工場」と定義しており、2024年度は新たに1拠点を認定し、累計で5拠点となりました。2030年度までに累計10拠点の認定を目指しています。さらに、アイシンで働くすべての従業員がネイチャーポジティブについて学び、事業活動との関わりを理解する場として、経営層を含む従業員への教育を開始しています。
グローバルにおける自然共生活動の実施状況
円の大きさは活動件数
基盤活動
環境マネジメント
アイシンは、環境への取り組みを全拠点で確実に推進するため「アイシン連結環境方針」を全グループ会社で共有しています。
2008年にEMS研究会を立ち上げ、「標準化」「人材育成」「アセスメント」の3つの柱を重点に年4回活動をしています。海外統括6拠点とは環境責任者と月に1回会議を設け、環境法遵守、環境重大事故の未然防止に努めています。
標準化
グループ全体で、想定される環境リスク(環境事故・汚染・法令違反など)を特定するため、2018年から「AGES(アイシングローバル環境スタンダード)」を設定し、7つの視点(排水、大気、廃棄物、騒音・振動、土壌・地下水、悪臭、共存会社の管理)で、環境リスクの未然防止と最小化に取り組んでいます。過去の環境事故を反省し、二度と同じことを起こさないため、規定の見直しや従業員教育、監査を強化しています。
EMS高度化のサイクル
人材育成
グループ全体で同じレベルの環境管理を目指し、2022年からマニュアル・標準の共通化を推進しています。環境法違反や事故・異常に直結する業務は、社内有資格者に限定し、3年ごとに教育とOJTを義務付けました。今後も専門知識やスキルが求められる業務に対して、人材育成を進め、環境法違反や事故を防止します。
アセスメント
アイシンでは、環境マネジメントシステム(国際規格ISO14001)の認証を連結会社の90%が取得し、維持・更新しています。しかし、グループ各社で仕組み・要領・管理標準の浸透にばらつきがあり、環境事故や異常の早期発見に課題を持っていました。そこで2024年度からは、マネジメントレビューの統合や内部監査の重点テーマの統一化を開始し、統制強化を図っています。