ものづくり×AI アイシンの「説明可能AI」と未来に向けた商品開発

2022.02.07

ものづくり×AI アイシンの「説明可能AI」と未来に向けた商品開発

障害物を検知しながら隅々まで部屋をきれいにしてくれるロボット掃除機や、「明日の天気は?」と質問すると音声で応えてくれるスマートスピーカーなど、私たちの生活はAI技術を活用した製品やサービスであふれています。

今や身近なものになったAIですが、さまざまな問題を解決し、新たな価値を創出する存在として製造業においても注目が高まっています。

「プロセス」と「新規事業」でAIを活用

近年の社会の多様なニーズに応えるため、あらゆる産業でDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けた取り組みが勢いを増しています。DXとは「デジタル技術による生活やビジネスの変革」のこと。AIはそのDXを実現するための技術の一つであり、中心となる「道具」です。今までの技術では扱いきれない膨大なデータを高度に分析し、ビジネスに役立てる存在として期待されています。AIをうまくビジネスに取り入れ、活用することがDXを成功させるカギであるといえます。

アイシンでは、社会課題へのソリューションを提供し、安心・快適な“移動”を実現するために、「プロセスの革新」と「新規事業創出」の2つの軸を中心にDXの推進およびAIの活用を進めています。

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 「プロセスの革新」におけるAI活用

「プロセスの革新」とは、デジタル技術を駆使して業務をスマート化・効率化することを指します。

アイシンでは、以前からロボットなどによる工場の自働化を進めてきました。しかし、依然として人の力に頼らざるを得ない工程が存在しており、その一つが製品の品質を見た目から判断する「外観検査」です。

 製品11点を徹底的に目視で検査するこの工程は、目を酷使するため検査員の身体的な負担が大きく、さらに不良を見逃すリスクがあるといった課題があります。アイシンはこの課題を解決して労働環境と品質の両方を向上させるために、AIを活用した自動検査システムの開発を進めています。

 しかし、実際の検査工程にAIを実装するには、越えなければならないハードルがいくつか存在します。その一つがAIの「ブラックボックス問題」です。

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外観検査における「ブラックボックス問題」とは

 AIは大量のデータをもとに、その中から規則性や判断基準を自ら見つけ出す「ディープラーニング」という方法で判断力を磨いていきます。この性質により、AIが判断に至る過程や理由が外部からわかりにくいという問題が発生します。これがAIの「ブラックボックス問題」です。

 アイシンの扱う自動車部品は「人の安全」に直結するため、なぜその結論に至ったかわからないAIの判断をもとに品質を保証することはできません。

また、AIが出した結論が間違いであっても、原因がわからなければ改善する方法もわかりません。

アイシンはこの問題をクリアするため、2019年自ら判断の根拠を示す「説明可能AI」を研究するカナダの人工知能スタートアップ企業と共同開発を始めました。

人が納得できる形で判断根拠を示し、次のアクションを人に示唆できるようなAIをつくるにはどうすればいいのか。スタートアップ企業と互いの知⾒を交換し、議論を重ねた苦労の末に「説明可能AI」を開発、実用可能な段階に達することができました。

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アイシンの「説明可能AI」 

 アイシンの「説明可能AI」の特長は「色と領域で判定根拠を可視化」できることです。「OKNG/未学習」の3分類を色で表現し、それらの特徴を持つ領域の情報も合わせて提示します。これにより人は、提示された情報を元に次にどのようなアクションを取れば良いかわかるようになります。

 また「未学習」データを判断できることで、AIが知らない形状の不良を誤って流出させるリスクを回避することができます。未学習のデータに対して再学習を繰り返してAIをより賢く進化させ、検査精度を高めていくことが可能です。

 AIの難題を克服し、実用レベルへと進化させることができた裏側には、絶対に不良品を見逃さないという品質へのこだわりがあります。

アイシンは、現場の課題解決を支援するAI開発を今後も続け、25年に開発期間を30%短縮、30年に生産コストを30%低減という目標を達成していきます。

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「新規事業創出」におけるAI活用と、未来を見据えたAI研究 

 アイシンのDXにおけるもう1つの軸は「新規事業創出」です。

これまでも「パーソナルモビリティILY-Ai(※1)」、「チョイソコ」などAI技術を活用したさまざまな商品やサービスを創出してきましたが、事業単位での開発が中心でした。

※1 開発中モデルにAI技術を搭載

 しかし、社会に必要な商品・サービスをタイムリーに提供していくためには、事業の枠を超えて開発体制を一元化することが必要と考え、会社全体のビッグデータの分析やAIの応⽤を主導する専門部署を設置しました。コネクテッド、カーシェアリング、自動運転など未来を見据えた商品・サービスへのAI活用を強力に推進するとともに生産領域への活用も加速していきます。

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パーソナルモビリティ「ILY-Ai

さらに開発拠点を、本社のある愛知に加え東京、福岡の3地域4か所に増設。優秀な人材を獲得するとともに、大学など研究機関やパートナー企業など連携先を増やし、活動の輪を広げています。

2021年4月に開設したAI開発の新拠点「Tokyo Research Center」では、数多くのAI研究テーマに挑んでおり、世界で初めて脳型AIの多層化に成功しMIRU(※2)2021で優秀賞を受賞するなど、着実な成果をあげています。

※2 画像の認識と理解技術に関する国内最大規模の会議

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Tokyo Research CenterのMIRU2021優秀賞受賞メンバー
(左から澤田 好秀、池川 慎一、名取 直毅)

私たちはいま、社会にデジタルテクノロジーが溶け込み、暮らしが大きく変化する転換点にいます。そして、その変革の中心となるのがAIをはじめとする先端デジタル技術です。

”移動”に感動を、未来に笑顔を。

アイシンはこれからも、AIの可能性を追求し、人々の笑顔あふれる持続可能な社会と美しい未来地球を次の世代へとつないでいきます。

AI技術を活用した主な商品・サービスはこちらで紹介しています

・高度な画像認識技術の活用
ドライバーモニターシステム」、「自動バレー駐車」、「見守りシステム

・位置情報サービスの活用
チョイソ」、「みちログ、Bridges@ny

・移動障害物(歩行者)の認識と回避技術の活用
パーソナルモビリティILY-Ai」※開発中モデルに搭載

・音声認識技術の活用
文字起こしアプリ YY Probe

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