山本 武志 藤井 宏行

山本 武志 藤井 宏行

イノベーション

エントリーシステム/見守りシステム乗降時も、移動中も
すべての時間を安心・安全・快適に過ごせる社会へ

CASEやMaaSなどの取り組みを受け、電気自動車(EV)をはじめ自動運転技術を取り入れた次世代モビリティの開発が進んでいる。それに伴い、安心して乗降ができるシステムの開発、乗降時や車内における安全確認の自動化が求められている。この分野でアイシンが力を入れているのが「エントリーシステム」と「見守りシステム」だ。モビリティで移動するすべての人の乗降や乗車中の安心・安全を提供する2つのシステムによって、未来はどう変わるのか。山本武志(エントリーシステム)、藤井宏行(見守りシステム)それぞれのキーマンにきいた。

interview

Index

  • 1. 移動時の安心・安全・快適をサポートする
    「エントリー」「見守り」システム
  • 2. 「当たり前」を徹底することで気兼ねなく
    乗降できる環境を提供
  • 3. より快適な乗降を目指し、
    利用者視点で積み重ねる地道な努力
  • 4. 正確なセンシングと見守りで移動中の不安を解消
  • 5. 「人の温かさ」を残し
    技術だけに頼らない見守りの実現
  • 6. 存在が当たり前になる社会へ

山本 武志 藤井 宏行

左:エントリーシステム開発 山本 武志
右:見守りシステム開発 藤井 宏行

1/移動時の安心・安全・快適をサポートする「エントリー」「見守り」システム

クルマを運転できない高齢者や、車いすを利用する人、ベビーカーを押す人など、移動に不自由を強いられている交通弱者は増加傾向にある。一方、100年に一度の大変革期を迎えている自動車業界。電動化や自動運転による無人化の技術開発が進み、モビリティを取り巻く環境はこの数年間で大きく変わったが、依然としてこうした交通弱者へのサポートは大きな課題となっている。この課題に対し、アイシンが力を入れて取り組むのが、山本、藤井それぞれが担当する「エントリーシステム」と「見守りシステム」だ。

エントリーシステムでは主に電動スロープや大開口スライドドアなどによって、快適な乗降をサポートする。一方、見守りシステムでは、センシング技術やカメラによるモニタリングによって、モビリティで移動する人の安心・安全をサポートする。

2/「当たり前」を徹底することで
気兼ねなく乗降できる環境を提供

移動に制約がある交通弱者がバスや電車などを利用する際、一般的に車掌や乗務員によってスロープが設置される。福祉車両などのスロープも人の手による操作が必要だ。

アイシンが手がけるエントリーシステムでは、パワースライドドアを両開きにして開口部を広げ、乗降のしやすさを確保。さらに、人が操作せずとも自動でスロープを出し入れできる仕組みとしている。こうしたエントリーシステムの社会的意義について山本は次のように語る。
「移動に制約がある人は、乗降の際に誰かの手を借りたり、周囲への配慮が必要だったりと、気にしなければならないことが多いのが現状です。我々は、アイシンの技術で誰もが人の手を借りなくても移動を楽しめるようサポートしたい。だからこそ、必要なとき、適切にスロープを出し入れする、という当たり前の事を徹底的に対応したいと思っています」

また、エントリーシステムの強みについて、山本は「開発から生産までグループ内で連携していること」にあると言う。
「アイシンは幅広い商品を手がけていますが、それらを組み合わせ、システムとして開発、提供できることが強みです。たとえばドアまわりは、構成部品やスライド用のモーターまで、ほぼすべてアイシンの商品だけで完結しています。加えて、アイシンでは可動部品の制御を行うコンピュータまで自前で開発できるので、ハードとソフトの両方をグループ内でカバーし、システムとして提供できるです」

スロープについても、「福祉車両などの部品や機構を開発していることが役立っています」と山本。車両用スロープに関しては、アイシングループ全体で国内シェア9割を占める。確かな実績と、ハードとソフト両面から開発を進められる総合力で、エントリーシステムは社会貢献を目指す。

3/より快適な乗降を目指し、
利用者視点で積み重ねる地道な努力

自動でドアを開閉したり、スロープを出し入れしたりする技術など、エントリーシステムの開発を進める際、注意しなければならないのは「利用者の視点に立つこと」だと山本は言う。
「凍結路や砂利道など、路面の状況は季節や場所によって大きく異なります。また、自動でスムーズにスロープを出し入れするためには、段差や障害物なども含め、あらゆる路面状況を考慮する必要があります」

たとえば、場所に合わせてスロープを出し入れする際の路面の摩擦抵抗の調査や、モーターの出力調整。また、出し入れするスロープの角度や長さなどの徹底的な計算が必要だ。山本の言う「当たり前」を実現するためには、これらのほかにも膨大な時間と労力をかけて調査や研究、実証実験などを重ねていかなくてはならない。果てしなく、気が遠くなりそうな作業だが、「それでも」と山本は思いを語る。

「一般的なシチュエーションでの路面はほぼ想定できていますが、世の中にはほかにもさまざまな道路があります。多くの人により快適に利用してもらうために、今後も研究・開発を進めます。不便だと感じる部分を一つずつ潰していく作業は、確かに地道なものです。しかし、一歩ずつでも前に進むことで、いつかは人々の日常の足として、当たり前に安心・安全な乗降と移動が楽しめる日が来ると私は信じています」

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