次世代のリーダーを輩出する「アイシン学園」。未来を創り、世界で躍動する人材の育成とは?【前編】

2022.08.31

次世代のリーダーを輩出する「アイシン学園」。未来を創り、世界で躍動する人材の育成とは?【前編】

時代、国境、事業領域などあらゆるボーダーを超えて、ものづくりの未来を見据えるアイシン。技術開発力、ものづくり力、グループの総合力というアイシンの3つの強みのすべてに通じる礎として位置づけているのが人材育成であり、その鍵を握るのが「アイシン学園」です。

次世代へ、そして世界へ。道を切り拓いていく人材を育てるためのアイシン学園が推し進める育成プログラムとは?単なる技能者の養成にとどまらない独自のメソッドに込められた思いを探るべく、教育現場に潜入した様子を前編・後編にわたって紹介します。

前編では「デジタル人材」の育成に焦点を当て、アイシン学園の今、そして展望をレポートします。


「アイシン学園」とは?将来のリーダーを育てる企業内職業訓練校

学園生②候補1.jpg

アイシン学園は、職業能力開発促進法にもとづき、愛知県知事に認定された企業内職業訓練校の1つ。1977年に開校し、 アイシンのものづくり現場を支える次世代のリーダーを育成しています。

目指す人材について学園長・大橋芳幸は「アイシンをこれまで支えてきた一番の財産はです。自ら考えて行動し、挑戦し続けるがすべての原動力であり、そういう人材を育成していくことが企業にとって最大の強みになる。何事も自分事化できる人を育てることが、当学園の役割だと考えています」と語ります。

★DSC02288.JPG

アイシン学園 学園長・大橋芳幸

大橋学園長の言葉に込められた人材育成にかける思いは、教育方針にも表れている。

アイシン学園では総訓練日数220日のうち、半分以上の120日間が生産に関わる基本的な技能取得に充てられるほか、心身訓練の時間も半分近くを占めます。学園生は習得した知識や技能を活用し、自らとしてどのように仕事に取り組むのか、仲間とどのように協力するのかといった視点に落とし込みながら、自ら考え、行動できる人材へと育まれていくのです。

環境変化・現場ニーズに即した教育を導入

⑦学園生ノート.jpg

ものづくりの精神と技能を伝承し、生産現場の核となる人材を育成してきた歴史あるアイシン学園ですが、自動車業界においては、カーボンニュートラルの達成や電動化、デジタル化の加速(DXAIIoT)といった、近年の急激な変化を伴う社会的潮流を受け、大きな舵取りを迫られることに。

環境変化に伴う現場ニーズの将来予測を踏まえ、新領域の拡充を実現するために専攻科の再編成やカリキュラムの改革に着手。2021年度には、従来の技能に加えてプログラミングやネットワーク構築を強化したコンピュータ制御科を新設。2022年度には従来の要素にデジタル技能も含めた製造設備科を設置することで、生産設備や通信設備の保全、システムメンテナンスの分野を牽引する人材育成に乗り出しました。

DX推進、IoT化の加速に向けて再編成

年間カリキュラム.png

アイシン学園年間カリキュラム

コンピュータ制御科、製造設備科立ち上げの背景には、生産ラインの自動化加速および社内のDX推進、IoT化による業務内容の大幅な変化が挙げられます。

今後ますます生産ラインの自動化が進むと、設備を稼働させるという直接的な作業は減少し、 設備管理や設備修繕といった管理・保全業務が中心となることが予想されます。

こうした現況や将来予測を踏まえ、今後、現場の管理監督者としての活躍を期待される学園生たちにとって、将来のステージにふさわしい専攻科の再編、カリキュラム改革が実施されたのです。

大橋学園長は「今後、電動化、デジタル化へのシフトがさらに加速することは明らか。従来の技能面に加え、設備を管理する、メンテナンスするといったIoTをコントロールできる人材の育成が急務であるという思いが、専攻科の再編成に踏み切るきっかけになりました。AIIoT、電気保全という次世代領域を力強く推進するキーマンを学園から輩出したい」と言葉に熱を込めます。

デジタル人材の自社育成にこだわる“背景”と“決意”

デジタル人材イメージ.png

世界規模でデジタルへの移行が加速する中、ものづくりの現場を牽引する次世代のリーダーとして、先端技術に対応できるデジタル人材は不可欠です。

日本全体に目を向けても、デジタル人材育成に関して行政や民間企業が取り組みを強化するなど、優秀な人材確保は今後の成長を見通す上で肝となっています。そのような状況下において、自社で人材を育成するアイシン学園が果たす役割はますます重要性を増しているといえるでしょう。

アイシンのDNAを注入する“自社育成”にかける情熱

★DSC02274.JPG

アイシン学園で学園生の指導を行う山本颯

学園生の指導を行う山本颯は「足りない人材は自社で育てる。現場の人材もリーダーも指導を行う人材も、社会環境や社内のニーズに合わせて自ら育てるというのが、アイシンらしさの1つでもあります」と語ります。

次世代のリーダーを育てるため、学園生の指導を行う人材の育成段階から綿密な計画の下にプログラムを構築しているという点もアイシン学園の特徴です。

例えばレベルアップを図るために、数ヶ月にわたる現場研修を実施するケースも。山本によると「どんな机上の学習よりも、現場にこそ最先端の技能があります。数ヶ月にわたって最前線の現場に触れ、技能や知識を習得し、それを学園に持ち帰って今後の指導内容に反映していく。この経験は、学園生の学びの向上はもとより、学園生の指導を行う私たちののレベルアップにもつながっています」と手応えを感じています。

先端技術にもチャレンジ! ここから始まる夢への第一歩

斎藤さん写真③.png

アイシン学園 コンピュータ制御科 卒業生・齋藤清香

コンピュータ制御科を卒業した齋藤清香は、アイシン学園での学びについて、「職場では、学園の心身訓練を通じて学んだ変化に対応する大切さや難しさなど、メンタル面でも学園の学びが活きていると実感する日々。コンピュータ制御科で学習した内容に関しても、自動化システムによる作業効率化をめざす上でPython(プログラミング言語)の知識や技術が必要になるなど、先進的な学びが実践に直結していると感じます」と話します。

待ったなしで進行するAIIoTの革新。その波を的確に捉え、スピード感を持って人材育成に反映させるためには、自社が求める人材を自社で育てるアイシン学園のフットワークの軽さや独自性が、大きなアドバンテージになります。

大橋学園長は「我々が求められる技術や領域は、今後、想像を超える速さで変化していくでしょう。その時に自ら声を発し、周囲を束ね、アイシンを牽引していける人材を、一人でも多く学園から羽ばたかせたい」と言葉を紡ぎます。

さらに、目指すべき真のリーダー像について問うと「卒業して1年後2 年後に評価される人材であるのは当然のこと。10年後、会社を支えるような役職に就いた時にもやっぱり学園生はさすがだなと言われ続けなければ意味がないのです」と学園の存在意義を話しました。

時代に合わせた知識や新たな技術の習得はもちろんのこと、どのような社会環境においても、リーダーであり続けるためのブレない心身を養う。この心身教育こそがアイシン学園の真骨頂であり、アイシンの成長の源泉となっているのです。

後編では、「海外における人材」の育成についてレポートします。

後編記事はこちら

この記事をシェアする

  • X
  • Facebook
  • linkedin