山本 義久

山本 義久

ビジョン

アイシンの未来を語る加速する「電動化」、アイシンは
心を動かす製品でさらに先を行く

※2022年12月27日 更新

interview

アイシンは、1960年代よりオートマチックトランスミッション(AT)を開発・生産し、クルマ社会の発展に貢献してきました。しかし、カーボンニュートラルの実現をめざして世界が大きく動く中、クルマも「電動化」に向けてかつてない変革を遂げようとしています。アイシンはこの局面を、どのような戦略で突き進もうとしているのでしょう。そのビジョンを、電動化の責任者であるCESOの山本が語ります。

Contents

  • 1. カーボンニュートラル実現に向けたアイシンの電動化
  • 2. 2025年、車両トータル15%以上の電費向上へ
  • 3. 心を動かすアイシンの製品づくり

山本 義久

チーフ・エレクトリック・
ストラテジー・オフィサー(CESO)
EV推進センター長
山本 義久

1.カーボンニュートラル実現に向けたアイシンの電動化

最適、スピーディーに応えられる
「電動ユニット」をフルラインアップ

アイシンではこれまで「走る、曲がる、止まる」や「快適利便」、「位置情報活用」といった、クルマの“移動”に関わる幅広い領域に携わってきました。そしてカーボンニュートラルの実現に向けて世界が大きく動く今、アイシンが製品面で加速させているのは、これまでに携わった領域の強みを活かした「クルマの電動化」です。

その中心となるのが、クルマの動力源である「パワートレイン」。さらに、ブレーキや車体関連まで幅広い製品による「クルマ全体のエネルギーの効率化」。とくにパワートレインの電動化に不可欠な「電動ユニット」では、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(BEV)、燃料電池車(FCEV)の各種車両に向けた製品のフルラインアップで挑みます。

しかし、なぜ電動ユニットにおいてフルラインアップが必要なのでしょうか。山本は世界各国のさまざまな動きを踏まえ、その理由を語ります。

「アイシンのお客さまは世界中に広がっていますが、カーボンニュートラルの実現に向けたエネルギー事情や政策は、国や地域ごとに大きく異なっています。それだけでなく、メーカーやユーザーの趣向も千差万別で、ATを搭載した従来のガソリン車を求める人もいれば、HEVやBEVを求める人もいる。こうした難しい状況の中でも、世界中のさまざまなニーズに合ったものをアイシンはスピーディーに提供していきます。
また、カーボンニュートラルを中期的な視点で見ても、その実現にはBEVだけでなく、HEVやPHEV向けの電動ユニットも拡充していくことが有効だと考えています。

私は、アイシンの仕事で重要なのは『製品を買ってもらうこと、そしてお客さまに“喜んでもらうこと”』だと思っています。全方位に向けたフルラインアップの対応は、そこにあるのです。
『ニーズに最適に素早く応えたい』という想いは、電動化にシフトした後も変わることはなく、それこそがアイシンの役割だと考えます。」

2.2025年、車両トータル15%以上の電費向上へ

強みの応用・発展で、
脱炭素×ユーザーのうれしさへ

アイシンが「電動ユニット」の中でもとくに最重要戦略製品と位置づけているのは、さらなる急増が予測されるBEV用の電動ユニット「eAxle(イーアクスル)」。アイシンは「高効率」「小型化」をテーマに、そのeAxleの開発を3世代構想で進めています。
しかし、需要が見込まれるeAxleの開発には世界中が注目しており、今後さらに競争が激化すると予想されています。こうした厳しい背景の中でも「これまでに培ったアイシンの技術開発力やものづくり力、そしてグループの総合力は必ず活かせる」と山本は自信を見せます。

「アイシンの強みの一つは、ATで培ってきたギアやシャフト、ケーシングなどの技術や生産設備を電動ユニットにも応用、転用でき、そしてそれを発展させられること。また、ATで磨き上げた『高効率』『小型化』の技術のほか、駆動用モーターにおいても累計1,000万台以上の生産実績があります。
競争が激化する中でもっとも大切なのは、自分たち自身の強みをどう活かして競争力を高め、ほかと差別化を図っていくかという点。アイシンにしかできないものを作っていきます。」

この「高効率」「小型化」は、電費(電力の消費率、ガソリン車の燃費に相当)の向上や軽量化などにより省エネに貢献できるほか、電動ユニット自体の材料低減や省資源、さらには廃棄物低減にもつなげることができます。

「2025年の量産化に向けて開発中の『第2世代』では、モーターの改良など最新の高効率化・低コスト化技術をベースに、小型化にこだわったスモールから高出力を特長にしたラージまで、個性の異なる3種類のモデルを用意しています。高効率を追求したベースとなるミディアムでは、空力デバイスと組み合わせ、車両トータルで約15%の電費向上を可能にします。
※BluE Nexus・デンソーと共同開発

さらに、2027年の市場投入をめざす『第3世代』では、モーターやギアトレインの刷新による圧倒的な高効率・小型化を図っています。第2世代の体積1/2を実現することで、あらゆるBEVに適応する圧倒的な搭載性、広い車室・荷室空間の確保、バッテリー搭載スペースの拡大、電費向上によるバッテリー搭載量の低減など、お客様の新しいクルマづくりに幅広く貢献していきます。

また、既存の事業の枠を超えてBEV向け製品の開発を行う『EV推進センター』を中心に、車両全体目線で新たな製品の開発も強化しています。クルマを止める力を電気として回収することでエネルギーの有効活用に貢献する回生協調ブレーキ、世界最小サイズの冷却モジュール、車両の高効率化に貢献する空力デバイス、軽量な電池骨格部品など、「高効率」で「小型」な魅力ある製品をスピーディーに市場に投入していきます。」

3.心を動かすアイシンの製品づくり

未来へ一歩リードしていくために
期待以上に応え、お客様に感動を

今後さらに電動化が進むと予測される中、山本はアイシンの未来の展望をこう語ります。

「今までエンジンだったものがモーターになると、応答性の面でも制御性の面でも、圧倒的にクルマのポテンシャルが上がります。私はそれによって、アイシンの提供できる『価値の幅』が広がると考えています。
アイシンではすでに、『駆動系のeAxle』と『制御系の回生協調ブレーキ』、この二つを持つ強みを活かし、両方を適切に制御する『車両運動制御』にも取り組んでいます。電動車においても、従来のガソリン車とはまた違った魅力のある走りを実現できるはずです。

リソーセスという面でも、ATやハイブリッドトランスミッションに携わった優秀なエンジニアや、高い品質のものづくりを可能にする工場・設備を持つアイシンなら、この先の電動化をリードできると確信しています。
私のエンジニア時代の経験ですが、量産にこぎつけ、製品を世に送り出すときの達成感は今も忘れられません。こうしたものづくりの楽しさは、これからのアイシンを背負う、若い世代の多くの人に感じてもらいたいと思っています。

私は、お客様の期待に応えるということは、『期待以上』の商品や仕事で『感動していただく』ことだと思っています。私たちは“移動”に関する商品づくりを担っていますが、移動は英語で『move(動く・動かす)』。moveは『人の心を動かす』と表現するときにも使います。将来の予測が難しい状況にあっても、『お客様の心を動かす、感動していただける商品づくり』を続けることが、アイシンにとって何より大切である、私はそう考えています。」

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