鈴木 研司

鈴木 研司

ビジョン

アイシンが未来を変えるアイシンが未来を変える
デジタルトランス
フォーメーション(DX)戦略

interview

アイシンは2021年4月に『“移動”に感動を、未来に笑顔を。』という経営理念を掲げた。この経営理念の実現に向けて加速させているのが、デジタルトランスフォーメーション(DX)だ。
DXは、デジタル技術の活用を通じてビジネスモデルや組織を変革することを意味するが、世界中でDXに向けた取り組みが勢いを増している。
これはDXを通じて、グローバルな課題を解決しつつ経済成長につなげることが、持続可能な社会の実現のための大きなカギと考えられているからだ。だれもが質の高い生活を送ることができる理想的な社会にするために、アイシンはDXをどう進め、どう独自の技術を活かしていくのか。
早くからIT施策の中心となってきた鈴木CDOに話を聞いた。

Index

  • 1. アイシンのDX。これまでと、これからと
  • 2. 全社横断組織で、多方面に新たな
    価値を生み出していく
  • 3. DXを通じ、社会解決ができる
    プラットフォーマーに

鈴木 研司

副社長執行役員
チーフデジタルオフィサー(CDO)
鈴木 研司

SECTION.1

アイシンのDX。
これまでと、これからと

ITの先駆け時代から、
いち早く取り組みをスタート。
今後はDXを従業員全員の「自分ごと」に

アイシンは10年以上前から、デジタル技術を活用した業務効率化やAI先端技術の開発、IoTを推進し現在のDXにつながるプラットフォームや技術を磨いてきた。こうした取り組みに早くから携わってきたのが、鈴木CDOだ。
「2007年、まだIoTという言葉も一般化していなかった時代のことです。それまでもアイシンは、IT化や自動化などによる既存プロセスの効率化を図る取り組みを進めていました。その考えをさらに一歩先に進め、それぞれの工程から組織を横断してデータを収集し、業務や技術の革新などに役立てようとしたのが、現在のアイシンのDX領域の仕事のスタートになっているように思います」
アイシンはその後も試行錯誤を繰り返しながら技術開発とものづくりの両面からDXを進め、バーチャル評価を活用した高精度な周辺監視システムの開発や、多様なニーズに対応する自律したデジタルファクトリーを実現してきた。
しかし、自動車業界の変革が求められているいま、さらなる改革が必要だと鈴木CDOは言う。

「真の競争力を高め、自動車業界の変革期を乗り切るためには、すべての業務の本質的なスクラップ&ビルドを進めていかなければなりません。これまでは社内でデジタル技術に関連する業務は、その知見が深いエンジニアなどが中心となって担ってきましたが、今後は従業員一人ひとり、全員がスピード感をもってDXに向けた取り組みを進めていく必要があると考えています」

SECTION.2

全社横断組織で、
多方面に新たな価値を
生み出していく

「DX戦略センター」の創設

こうした動きを背景にアイシンが新たに創設したのが、「DX戦略センター」だ。センターは、カンパニーの枠を超えた独立した組織という立ち位置で、業務プロセスの変革やデジタル技術を活用した新たな取り組みをより加速させ、デジタル経営基盤の確立を推進するのが目的だ。
「センターには若手も含め、現在200名ほどのメンバーが各カンパニーから集められています。そこで、それぞれの解決課題をテーブルに上げてDXを進めていますが、部門の垣根を越えた取り組みによってより全社の組織横断がしやすくなりました。人事や経理などの経営資源管理や、設計開発など幅広い領域でDXを展開し、業務プロセスの変革や製品・サービスの創出につなげることで、世の中にまだない価値を提供していけるはずです」

アイシンの強みをDXで複合化し、生産革新や新規事業創出に挑戦

DXを推進する上での、アイシンの強みは何なのか。「これまでに培ってきた生産管理のノウハウは、一番の強みになると考えています」と鈴木CDOは自信を見せる。
「アイシンには過去から培ってきたさまざまな技術がありますが、こうした独自の強みや価値を、複合的に高めていくことこそがアイシンのDXだと考えています。たとえば従来、設計・生産・製造は順を追って進めていましたが、現在はDX化によって3D技術を一貫活用し、製品設計と同時並行で生産ラインや加工設備の検討を行い、開発期間の短縮を図っています。そこにはアイシンが長年の歴史で構築したカンやコツなどの暗黙知も取り入れて、デジタル技術の中に活かされています」
またアイシンは、カーナビゲーションシステムや自動運転支援技術をはじめとする幅広い領域の技術力やデータ分析力も強みにしているが、それにDXを活かした独自の価値の創出にも挑戦している。
車両や道路などから得られるビッグデータを「モビリティサービスプラットフォーム」上で分析・シミュレーションし、新たなサービスを創出しているのだ。
「たとえば物流では、これまでは決められたルートをドライバーが順にまわるのが通常でした。しかしこのアイシンのプラットフォームを活用すれば、空きの出たトラックがカーナビによる最適ルートで配送・収集先をまわりながら、庫内の積荷の状況をセンシング技術によって管理することができ、配送や収集業務が効率よくこなせるだけでなく、燃費向上にもつなげることができます」

SECTION.3

DXを通じ、社会解決ができる
プラットフォーマーに

技術と意識の向上で、
リスクをチャンスに変えていく。

アイシンではDXの取り組みの一つとして、全部門の従業員にDXの人材教育を実施する。教育には座学だけでなく、ハンズオンと言われる実践的教育も取り入れる予定だ。これには人材流動を活性化させるとともに、デジタルの知識や技術を体験的に身につけることで、これからの時代を勝ち抜くための一人ひとりのスキルの向上をめざし、さらにはセカンドキャリアへの支援につなげたいという想いもある。

DXの推進から見える将来のアイシンの姿を、鈴木CDOはこう話す。
「電動化や自動運転など、求められている変革を成し遂げていくために、アイシンの未来はDXなしでは語れません。さらにアイシンとさまざまな企業や自治体が協力することで、多様な社会課題の解決も可能だと考えています。たとえば位置情報を活用したプラットフォームでは、アイシンが展開する乗り合い送迎サービス『チョイソコ』で培った技術やノウハウを応用した子育て支援を、すでに岡崎市で実証実験を開始しています。
DXの推進を通し、アイシンがめざすのは、社会課題を解決できるプラットフォーマーとなること。全従業員が一丸となってそれをめざし、一つひとつ実現していきます」

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