開発期間を30%短縮! 電動駆動ユニットの「フルラインアップ化」を支えるアイシンのDXとは?

2022.02.28

開発期間を30%短縮! 電動駆動ユニットの「フルラインアップ化」を支えるアイシンのDXとは?

アイシンは、「HEV」「PHEV」「BEV」「FCEV」※1といった電動車両向け駆動ユニットをフルラインアップでそろえています。これは、世界各地のエネルギーやインフラ事情に寄り添い、お客様のニーズに適したユニットを提供することで、カーボンニュートラルの実現に大きく貢献できると考えているからです。しかし、需要の高まるBEV向け製品の開発を加速させると同時に、HEVなど従来製品のラインアップも充実させていくことは容易ではありません。それをどう実現させるのか、アイシンの取り組みを紹介します。

1 HEV: ハイブリッド車
        PHE: プラグイン・ハイブリッド車
        BEV: 電気自動車
        FCEV: 燃料電池車

デジタル活用で開発プロセスを変革。期間を30%短縮

電動車両向け製品を幅広く、タイムリーに提供していくには、開発スピードを飛躍的に加速させる必要があります。アイシンは、「2025年までに開発期間を30%短縮」という目標を掲げていますが、ここで必須となるのが開発プロセスにおけるDX(デジタルトランスフォーメーション)です。

Dモデルで設計し、バーチャルで検証

アイシンは、製品開発に「モデルベース開発(MBD)」を導入。MBDとは、コンピュータ上で再現した3Dモデルをもとに、シミュレーションによる検証を行いながら開発を進める手法です。従来は、実際に試作品を作り、評価を繰り返しながら品質を高める方法で設計を行なっていました。しかし、この方法はトライ&エラーを繰り返すたびに何度も試作品を作り直す必要があり、膨大な時間とコストがかかります。

これに対して、MBD3Dモデルとスーパーコンピューターを用いたシミュレーションにより、試作品を作らずに短いサイクルで設計・検証が行えるため、早い段階で高精度な設計ができるようになります。

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図|モーター冷却シミュレーションの事例。部品の3Dモデルを用いて、駆動ユニット内で冷却油がどう流れるかをバーチャルで検証します。理想的な油流れをめざしてモデル形状の最適化を繰り返し、設計の完成度を高めます。

3Dモデルで後工程を同時進行

MBDの導入は、製品設計だけでなく全体の開発プロセスにも良い影響があります。

これまでの開発プロセスは、①商品企画 ②製品設計 ③工程設計 ④量産準備 ⑤量産 と順を追って行われていました。一方、MBDの導入後のプロセスでは、「②製品設計」の早い段階で完成度の高い設計ができるため、その3Dモデルを用いて後工程の「③工程設計」を平行して進めることができます。2つの工程を同時に進めることで、開発期間の大幅な短縮を図ることができます。

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VR技術で工程設計をシミュレーション

さらに、「③工程設計」における作業性の検証に、VR(仮想現実)を活用する取り組みを始めています。作業性の検証とは、作業者の動きや設備保全のしやすさなどを確かめることです。従来は設計した生産ラインを実際の現場に整備し、作業が可能か検証するという手順で行っていました。しかし、このやり方では多くの手戻りが発生し、準備期間が長くなるという課題があります。

VRによる作業性の検証は、VR空間に仮想の生産ラインを再現し、人がその空間に入り込んで検証を行います。実際の作業を疑似体験し早期に課題を把握することで手戻りを防ぎ、より迅速に生産準備を進められるようになります。

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独自のプラットフォームでプロセス変革をサポート

DモデルやVRを使った開発を行うには、今までのルールや業務プロセスを大きく見直す必要があります。

この課題に対し、アイシンは設計から生産までの業務を全体管理するプラットフォーム「v.Platform(ブイ・プラットフォーム)」を開発しています。v.Platformは、3Dモデルなどの成果物のほか、開発の背景や課題、評価データなど、開発に関わるすべての情報を記録できるツールです。データの受け渡しなど工程間のコミュニケーションはもちろん、プロセス全体を見える化することで、ルールの見直しやプロセスの再構築も容易に行えるようになります。

アイシンは、このプラットフォームをあえて自社で開発しています。それは、製品開発プロセスの変化や高速化とともに、それを支えるツールも迅速に変化していかなくてはならないという考えているからです。まずは電動車両向け新製品の開発を中心に活用しつつ、今後はさらにその他の製品へと範囲を広げていきます。

 今回紹介した新しい開発プロセスのように、アイシンは既存の仕組みやルールを見直し、さまざまな改革を行なっています。カーボンニュートラルな社会の実現をめざして、私たちはこれからもデジタル技術を積極的に取り入れ、モビリティの電動化を推進していきます。

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