カーボンニュートラル実現に向け、アイシン・ヨーロッパで風力発電が運転開始!
2024.12.05

アイシングループは、2050年までにライフサイクル全体でカーボンニュートラルを達成することをめざし、グローバルで活動を推進しています。今回はヨーロッパでの取り組みと、新たにスタートしたベルギー・モンス工場での風力発電プロジェクトについて紹介します。
再生可能エネルギー導入を拡大
アイシン・ヨーロッパは、ベルギーのブレン・ラルー(Braine-L'Alleud)に本社を置き、ヨーロッパ内に4つの生産拠点、3つの販売拠点、7つの研究開発拠点を持つ地域統括会社です。主にヨーロッパ内に生産拠点を持つ主要自動車メーカーに、ボディおよびパワートレイン部品、トランスミッション、シャシーなどを提供しています。
アイシン・ヨーロッパは、2040年までにヨーロッパ全拠点でカーボンニュートラルを達成することを目標に、再生可能エネルギーの活用に取り組んでいます。中でもベルギーの生産拠点である「モンス工場」では、2014年に地熱発電を採用、2017年に敷地内に4,300枚のソーラーパネルを設置、そして2024年には駐車場にソーラーパネルを追加するなど、積極的な取り組みを進めてきました。
この取り組みをさらに先へと進めるため、アイシン・ヨーロッパはモンス工場敷地内に風力発電のための風力タービン(風車)を導入することを決定しました。そして2024年6月14日、初の風力タービンの落成式が行なわれました。
風力発電の導入により、モンス工場は年間約1,223トンのCO2削減を実現しました。これは、約7,300本の木が1年間に吸収する量と同等です。この取り組みにより、モンス工場はアイシングループ内の生産工場として初めて、電力需要の100%を自家発電による再生可能エネルギーで賄えるようになりました。これは、2040年までにすべてのCO2排出量を相殺するというアイシン・ヨーロッパの目標を前進させる、重要なマイルストーンです。
風力発電導入の舞台裏1:課題の克服
風力発電導入の最初の一歩は、2017年にプロジェクトのパートナー探しを始めたことに始まります。プロジェクトに携わったアイシン・ヨーロッパのファビアン・ドゥポンは、「良いパートナーを見つけるのは、想像以上に難しかった」と話します。というのも、プロジェクトを進めるためには、協力してくれるエネルギー会社を見つけるだけでなく、ベルギー政府との関係構築も含めてさまざまな対応が必要でした。
「さまざまなエネルギー会社に相談するだけでなく、ベルギー政府とのコミュニケーションや交渉も必要でした。モンス工場の敷地が風力タービンの建設に適しているという確認は取れましたが、私たちはすぐに別の問題にぶつかることになります」とファビアンは振り返ります。この地域は、在来種のカモメである「ミュウカモメ」の渡りの中継地である可能性が浮上したのです。
「長期間の政府の調査が始まりました。その間、プロジェクトメンバーのモチベーションを維持し続けることが最大の課題でした。幸いにも風力タービンがカモメを危険にさらすことはないと判断され、プロジェクトは遅れながらも続けられることになりました」とファビアンは振り返ります。
2021年、プロジェクトは再び始動します。アイシン・ヨーロッパは、エネルギー事業などを通じて持続可能な経済発展を支援している、ベルギーの公的機関イデア(IDEA)の協力を得て、エネルギー供給会社ルミナス(Luminus)とパートナーシップを結びました。アイシン・ヨーロッパは風力タービン建設用の土地を提供し、プロジェクトにおける調整役を務めます。一方ルミナスは、建設と送電網への接続を監督し、風力タービンのメンテナンスを担当することになりました。
商業契約が整い、計画を行動に移す時が来ました。電気ネットワークの専門家としてプロジェクトに加わった、ジェローム・ガスパールは、プロジェクトを次のように振り返ります。
「風力発電プロジェクトはアイシンで初めて担当した大きなプロジェクトでした。当時は、このプロジェクトの難しさを予想できていませんでした。今思えば、この経験は自分の専門分野だけでなく、人間関係構築のスキルを身につけることができた良い機会だったと思います」
風力発電導入の舞台裏2:成功への鍵は、信頼できるパートナーシップ
ファビアンとジェロームは、信頼できるパートナーシップの構築こそがプロジェクト成功の鍵だったと言います。「単純明快でわかりやすいコミュニケーションが重要なポイントでした。数字や事実で語る技術的な環境では、簡単なことだと思われがちですが、実際はそうではありません」
ジェロームは、短い時間でパートナーや専門家など複数の関係者間で共通理解を得ることの難しさについて次のように話します。「各分野の専門家の意見を重視しながら、互いの立場を尊重し合い、協力して物事を進めていく必要がありました。関係者全員と良好な関係を維持しながら、難局に対応するのは難しいことでした」
ジェロームが特に覚えているのは、高圧受電設備※の交換作業です。この作業は、モンス工場全体の電源を切り離し、それを新しい受電設備に再接続するもので、IT、生産、メンテナンス、その他多くの部門に対して大きな影響を及ぼします。「非常にプレッシャーを感じる経験でした。失敗すれば生産が完全にストップしてしまう危険性があり、また、サーバーがダウンして再起動できなくなる可能性もありました」とジェロームは振り返ります。
※高圧電力を、施設内で使用できる電圧にまで下げるための設備
「私たちは、関係部署やメンバーに計画を何度も説明し、漏れのないよう個別に対応しました。全ての部署の協力を得て、生産の段階的な縮小と再開に対応するための徹底的なバックアップ計画を作成しました」この万全な準備のおかげで、生産は計画通りに再開されました。
「今回のプロジェクトから得た多くの知識と経験を、同じような取り組みを実施する他のアイシンの拠点に広め、役立てていきたいと思っています」とファビアンは締めくくりました。
将来へのビジョン
モンス工場のカーボンニュートラルに関する取り組みは、風力発電にとどまりません。次のステップとして、ファビアンのチームは風力発電で生産された余剰電力をバッテリーに蓄電し、電力需要のピーク時に使用することを検討しています。さらに、モンス工場で生産された電力を他のヨーロッパ拠点が使用できるよう、仮想電力購入契約(VPPA)の導入も検討しています。
カーボンニュートラルへの取り組みは、アイシン・ヨーロッパの他の生産拠点(チェコ共和国、英国、トルコ)でも進められています。溶解炉を使用しているチェコ共和国では、持続可能なガスの代替エネルギーを検討しており、トルコでは太陽光発電所の建設が計画されています。これらはすべて、アイシン・ヨーロッパの拠点で使用するエネルギーの100%を持続可能な資源から調達するという、2025年の目標を達成するための施策です。さらに長期的には、アイシン・ヨーロッパは2040年までに全拠点でカーボンニュートラルを実現することを宣言しています。
カーボンニュートラルと循環型経済への活動は、製造業に携わる全員の責務です。ヨーロッパの活動同様、私たちは世界中の拠点でカーボンニュートラルに向けた活動を推進し、未来地球に美しさを届けていきます。