初のヒートシンク開発をワンチームで達成!電動化推進へさらなる貢献をめざす

2026.03.30

初のヒートシンク開発をワンチームで達成!電動化推進へさらなる貢献をめざす

温室効果ガスの排出削減に向け世界的にクルマの電動化が進んでいます。電動車両ではバッテリーの性能や安全性が車の価値を大きく左右するため、その温度を適切に保つ技術が欠かせません。
そこで重要な役割を担うのがヒートシンクです。ヒートシンクとは、バッテリーの温度を適切に保つための温調装置で、内部に冷却水を流して電池の熱を逃がしたり、外気温が低い時は熱を与えたりする部品です。電池の性能維持や長寿命化、安全性確保に不可欠な存在です。

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電池パック構造
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アルミ製ヒートシンク

今回は、アイシン初となる電池温調用ヒートシンクの開発にスポットを当てます。初めての技術に挑み、数々の困難を乗り越えて量産化を実現した開発チームの舞台裏を振り返りました。

困難でありチャンスでもあったプロジェクト

今回、開発したヒートシンクは、2枚のアルミプレートを重ねてろう付けし、その間に流路を設けて冷却水を循環させる温調器です。

しかし、アイシンにとってBEV(電気自動車)向けバッテリー冷却器の開発は初めて。アルミのろう付けや大型アルミのプレスも、いずれの社内では前例のない挑戦でした。

2018年に開発がスタートし、様々な工法をトライした後、2022年から開発が本格化しました。高い完成度が求められる中、一から技術とノウハウを確立しなければならない難しいプロジェクトでした。一方で、ここで経験を積むことができれば、今後の電動車両製品の開発に大きな財産となります。

そこでアイシンは、従来とは異なる開発体制を採用しました。通常は生産準備から参加する工場の技術室や品質管理部も、開発の初期段階から参画。設計、生産技術、工場、品質が一体となって取り組む体制を整えたのです。

こうして、アイシン初のヒートシンク開発がスタートしました。

危機から始まった再出発

開発は順調に進んでいるように見えました。同年には、1/20サイズのモデルで一定の結果を出すことができました。しかし、その後、チームの前に大きな壁が立ちはだかります。先行試作段階の1/1サイズのモデルを納入する期限までに、冷却水が漏れない製品をつくることができなかったのです。

最大の原因は、初めて取り組むアルミのろう付け。
最初の納入期限が守れなかったことは、開発チームにとって大きな衝撃でした。

プロジェクトリーダーの本郷谷彰人は振り返ります。
「役員をトップに改めて体制を組み直しました。その上でしっかりとした技術と品質を確保するため、量産ラインを導入して製品をつくり込むことを全員で決断しました」

開発チームは、量産ラインを導入し、もう一度ゼロから製品をつくり込むという決断を下します。
こうして、2年をかけて品質と設計の両面から製品を完成させる新たな挑戦が始まりました。

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プロジェクトリーダー 設計担当 本郷谷彰人

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ヒートシンクの生産ライン。中央から奥に向け予熱室、加熱室、冷却室と連続炉が続いていく

最大の難関「アルミろう付け」

ヒートシンク本体をつくる大型アルミのろう付けでは、2枚のアルミプレートを接合するだけでなく、その間に冷却水を流す流路を設け、完全な気密性を確保する必要があります。そこで、グループ内で鉄の銅ろう付けを行っている部署の知見も借りながら試作を繰り返し、ついに冷却水が漏れない試作品を完成させることができました。

しかし、問題はそこからでした。
「その時点では成功要因を特定できておらず、再現性を確保することが課題となっていました。」
サブリーダーの原崇志は当時を振り返ります。

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サブリーダー 生産技術担当 原崇志

アルミろう付けでは、炉の中で製品を約600℃まで加熱し、その後冷却します。1.5メートルのアルミは加熱によって約3センチも膨張し、冷却時には収縮します。できあがる製品はコンマ何mmを精度として要求されていますが、昇温、冷却の過程で変形が発生し、製品サイズが変わってしまう問題が起きていました。しかも、炉の中の様子は外から見ることができません。そこでチームは、炉内温度の上げ方や下げ方を何度も試しながら条件を探るとともに、コンピューター解析を活用して炉内で製品がどのように変形するのかをシミュレーションしました。

さらに、製品を固定する治具の条件も徹底的に研究することで、見えない炉の中で起きている現象を見える化。ろう付け品質を安定させることに成功しました。

大型アルミプレスというもう一つの壁

一方、大型アルミのプレス工程でも製品が割れる不具合が発生していました。

これまでアイシンが社内で行ってきたプレスは手のひらサイズの製品が中心で、今回のような大型アルミ部品は新しい領域でした。そこで新たに仕入先を選定し、トライのたびに現地へ足を運びながら製品づくりを進めました。そのうえで、プレスのスペシャリストである岸本憲二は振り返ります。

「トライのたび仕入先に足を運び、共に意見を出し合いながら製品をつくり込む作業は苦労の連続でした。しかし、試行錯誤を重ねる中で、アルミ材の特性を解析しながら成形条件を確立。割れの問題も解決することができました。」

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プレス担当 岸本憲二

さらに、量産ラインの安定化や品質の確立においてもゼロからの挑戦でした。
量産ラインでは、工場エンジニアリング担当がラインに常駐し、稼働率を高めるための課題を徹底的に洗い出しました。その数は1000件以上。改善点を一つずつ解決する地道な取り組みが続きました。

品質面でも新しい検査技術が導入されました。
ヘリウムガスを使って冷却水の流路の気密性を確認するリーク検査や、超音波探傷機を活用したろう付け欠陥の検査など、見えない部分の品質を保証する仕組みが整えられました。

ワンチームで乗り越えた開発

このプロジェクトの大きな特徴は、組織の壁を越えた協力体制でした。
設計、生産技術、工場、品質が毎日同じ部屋に集まり、課題を共有しながら議論を重ねました。また、社内のサポート体制も大きな力になりました。

「できていないことを言いやすく、それを責めない環境を役員がつくってくれました」
と本郷谷は振り返ります。

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“ワンチーム”でヒートシンク開発に挑んだメンバー

その上で、うまくいってない局面では、役員や部長がお客様の会議に参画し、お客様も巻き込んだ協業体制を構築しました。また、お客様もアイシンにしっかりと寄り添ってくださり、実務メンバーはそれぞれの課題解決に集中できる環境が整ったと言います。

また、原は「当初から組織の壁が取り払われていたのもこのプロジェクトのいいところです」と話します。人員が必要なときには上司自ら各部に連絡をとってくれ、「こういう知見を持った人を探しています」という依頼が、グループ各社を含めてすぐに伝わり、「実際、課長クラスから担当職まで多くの人にサポートしていただきました」と話します。

次の電動化製品へ

こうして完成した電池温調用ヒートシンクは、2025年から市場投入されました。

今回の開発を通じて、アイシンは大型アルミのろう付け技術や、炉内の製品挙動を解析するコンピューター解析技術を高度化。さらに量産品質を支える測定・検査技術も確立しました。これらの技術は、今後の電池関連製品やアルミ部品の開発にも生かされていきます。

アイシンの電動車両向け製品開発のロードマップ

ロードマップ イラスト.jpg

本郷谷は次の目標をこう語ります。
「今回の開発は先行する競合へのキャッチアップという位置づけでもありましたが、この経験は私たちにとって多くの学びと手応えを得る機会となりました。知見が十分でない中でも、課題に対してメンバー同士で考え抜き、意見を出し合いながら、迅速に数多くのトライを重ねて検証を進め、解決へとつなげることができました。その過程で生まれたメンバーの成長や絆は、今後に向けた大きな財産だと感じています。将来は、電池骨格など新しい電動化製品の開発にも挑戦していきたいと考えています。」

アイシン初のヒートシンク開発で得た技術と経験は、電動化時代の次の製品づくりへとつながっていきます。

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