【5分でわかる】進む部品の一体化。「Xin1」のeAxle(イーアクスル)とは?

2024.01.29

【5分でわかる】進む部品の一体化。「Xin1」のeAxle(イーアクスル)とは?

カーボンニュートラルの実現に向けた取り組みのひとつとして、クルマの電動化が世界中で急速に進んでいます。そんな中、電気自動車(BEV)の駆動ユニットとして新たに登場した「eAxle(イーアクスル)」は、従来のエンジン+トランスミッションに代わる部品として注目を集めています。さまざまな企業がeAxleの開発に取り組んでいますが、その先の進化のひとつである「Xin1」のeAxleとはどのようなものなのでしょうか。ここでは、Xin1の解説と、アイシンのeAxle開発についてお伝えします。

Xin1eAxleとは

Xin1」とは、複数の部品や機能を1つにまとめたeAxleの総称で、「X」は一体化した部品の数を示しています。例えば、5つの部品を一体化した場合は「5in1」のeAxle、8つの部品を一体化した場合は「8in1」のeAxleとなります。

現在主流のeAxleは、「インバーター、ギア、モーター」を一体化したものです。3つの部品を1つにまとめているので、これを「3in1」のeAxleと呼びます。

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電動駆動ユニットの一体化はますます進んでいくと予想されており、さまざまな企業がより多くの部品を1つにまとめた「Xin1」の開発に取り組んでいます。

一体化のメリット

では、複数部品の一体化のメリットとは何でしょうか。

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1つ目のメリットは、部品を集めて一体化することで、個別のケースや部品同士をつなぐケーブル、配管などが不要になり、全体のサイズを小さくすることができます。その結果車両設計の自由度を高め、トランクや車内のスペースを広くすることができます。

2つ目は、サイズを小さくすることで重量も軽くなります。クルマを軽くすることで、少ない電力でより長い距離を走ることができます。つまり、電気自動車の「電費」を向上させることができるのです。

3つ目に、部品や材料の使用量を減らすことで、コストを削減することができます。電気自動車の普及には、車両価格の高さが課題とされていますが、eAxleなどの主要部品のコストを下げることで、電気自動車の価格を抑えることにも貢献できます。

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より多くの部品を一体化することで全体が小型軽量になり、「省スペース」「電費の向上」「低コスト化」といった効果を生み出します。

アイシンの「Xin1

アイシンは、3世代構想で3in1eAxleの開発を進めています。すでに第1世代のeAxleは量産が始まっており、トヨタのbZ4Xなどの電気自動車に搭載されています。2025年に投入予定の第2世代では、世界最高レベルの高効率を実現し、さらにフルラインアップ化を図ります。そして、第3世代では、体格を第1世代の1/2にする圧倒的な小型化を実現します。

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そしてその先の可能性の1つとして、第3世代をベースにさらに多くの部品を一体化した新製品「Xin1」の開発を進めています。

Xin1について、プロジェクトを率いる前田拓洋は、次のように説明します。
「アイシンのXin1は、従来の3in1に加えて電力変換器、熱マネジメント機能、統合制御を一体化することが特徴です。第3世代の『体格1/2』だけでも革新的ですが、さらに多くの部品を一体化することで、ボンネット内の空間を大幅に増やすことができます。これによりクルマのデザインの自由度が上がり、トランクルームも広くなるなどの利点があります。また、車内のスペースが大幅に広がることで、クルマの中での過ごし方も変わってきます。エンターテイメントなどの要素も重要視し、電源系も統合しました。さらに、乗降のしやすさなど、あらゆる可能性を考慮した新しいモビリティの価値を創造していきます。」

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Xin1開発 前田拓洋

他に追従されない、強み

前田は、圧倒的な小型化ができるのは、材料から開発ができる強みがあるからこそと言います。
「例えばギアに使用する鉄は、強靭な材料を使うことで、ギアの幅を半分に減らしています。これは、鉄の組成と加工に詳しい私たちだからこそ実現できること。要素技術面においても、他社には絶対に負けません。」

さらに、世界最高レベルの効率を実現できる理由を、第2世代の開発を率いる久保山裕満は次のように話します。
「アイシンには、トランスミッションの開発で『高効率・小型化』を追及してきた半世紀以上の歴史があります。私たちは、一つひとつの構成部品を小型化し、さらに高効率化する技術を積みあげてきました。これが可能なのは、多くの機能部品を自社で開発しているからです。」

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第2世代eAxle開発 久保山裕満

車両統合制御でさらなる付加価値を

さらにアイシンのXin1は、車両運動の統合制御も一体化しています。私たちはクルマの「走る」「曲がる」「止まる」といった機能に関連する製品を幅広く提供しています。eAxleとこれらの製品を連携・協調させることで、安全性、電費効率、運転の楽しさや快適さなどを向上することができます。

「例えば、電気自動車は寒さに弱いという課題があります。冷えたバッテリーはパワーが出にくくなるため、温める必要があります。寒い季節には、車室内の暖房も必要です。暖房には多くのエネルギーを使うため、eAxleから発生する熱を暖気として利用しますが、それでも足りない場合は電気を使ってeAxleの熱量を増やす制御を行います。この時に、電気を使いすぎてしまうと、走行できる距離も短くなってしまいます。
そこで、カーナビゲーションの経路探索や位置情報を活用して、今後の走行ルートに対して、バッテリーや車室内を暖気する必要性を判断します。もし残りの距離が少ない場合は暖気せずに走行し、電力を節約するというわけです。製品単体の魅力を向上するだけでなく、クルマづくりをよく知る私たちだからこそ、車両全体で高い付加価値を生み出すことができます。(前田)」

Xin1に限らず、フルラインアップで製品を揃えることで世界中の地域のさまざまなニーズに応えていきます。これからも皆さまに新しいユーザー体験を提供していきますので、期待してください!(久保山)」

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