快適かつ安心な走りに貢献するアイシンの「e-Four」

2022.04.28

快適かつ安心な走りに貢献するアイシンの「e-Four」

多くのファミリーユーザー層を中心に支持されているミドルサイズ・ミニバン。その中でも高い人気を集めているのが、2022年1月に8年振りにフルモデルチェンジをしたトヨタのノア/ヴォクシーです。
バリエーション展開も刷新され、先代のハイブリッド車(HEV)にはなかった4WD(4輪駆動)仕様が追加されました。

同車両は、FF(前輪駆動)が基本ですが、4WD車もボディのデザインは共通です。極上の空間が広がるインテリアは、後席の足元に大きなゆとりを生むフラットフロアを持ち、後端の床下にはスーパーラゲッジボックスを装備しています。
HEVの4WDモデルでもその室内空間を犠牲にせず、さらに走りとの両立を可能にしたのが、アイシンが新開発したe-Four(電気式4WDユニット)なのです。

その進化の大きさは侮れない

 4WDと聞いてまず思い浮かべるのは、悪路走行が得意なSUVかもしれませんが、現在ではセダンやミニバンなどのさまざまなクルマに搭載されています。後者の電気式4WDの場合、多くは前輪駆動のクルマに後輪駆動用の電動モーターをプラスして、雪道や登坂路などの滑りやすいシーンだけ自動で4WDに切り替えて走行します。その後輪駆動用の電動モーターがカバーする速度域はせいぜい30km/h程度までなのが一般的。シンプルに発進をアシストする機能に過ぎません。

しかし、今回新開発したe-Fourは、まるで次元の異なる驚きのユニットです。なんと最高出力は30kW、最大トルクは84Nmを発揮します。2016年に発売されたプリウスの4WDモデルに搭載されている当社の既存製品は5.3kWと55Nm。それと比較して、出力は約5.7倍、トルクも約1.5倍と強力です。
例えるなら、後輪駆動のためだけに軽自動車に匹敵する動力性能を備えているのです。

貫かれたコンパクト設計

図1.jpg

ごく簡単に言うと、ハイパワーを求めるのであれば、大きなモーターに大電流を流せば良いのです。しかし、大きく重いユニットでは、ノア/ヴォクシーの魅力的な居住空間を実現することができません。新型の開発では、あくまでコンパクトなスペースに納めることが求められたのです。

鍵となったのは、IPM (永久磁石式)モーターの採用と2段減速ギアを組み込みながら、2軸構造を成立させたことです。詳細は構造図に示す通りですが、モーターのローター(回転子)に永久磁石を使用。さらに、モーターの動力が伝わるインプット軸を中空構造にし、その中にアウトプット軸を通す仕組みを採用しています。変速ギアを介すので、ごく当たり前に考えると、3軸構造となるのが一般的ですが、2本のシャフトを同軸上にレイアウトすることで、搭載性に優れるコンパクト設計の実現に成功しました。

その結果、ノア/ヴォクシーの快適な居住性を犠牲にすることなく、これまでにない電気式4WDユニットの新世代「e-Four」が誕生したのです。

図2.jpg

動力性能や操縦性向上に大きく貢献

e-Fourは新開発された1.8Lハイブリッドシステムとともに協調自動制御され、車両の発進時は4WD 化して4輪のタイヤがしっかりと地面を蹴り出し、加速性能の向上に貢献。駆動力は高速域までをカバーし、フルタイム4WD に近い高性能を発揮します。

また、ステアリング操作に応じて前後輪への駆動力が適切に配分され、コーナーリングでの操縦安定性の向上にも貢献しています。

このe-Fourの開発責任者の喜田は、今回の新規開発では損失低減に徹底的にこだわりました。     

「モーター動力を伝える各回転軸やギアができる限りスムーズに動くよう工夫しています。ハイパワー化に伴いケース剛性の強化はもちろん、オイルで潤滑するシステムの高効率化も追求しました。

オイルはギアやベアリングなどの焼き付き防止に不可欠ですが、反対に粘度抵抗による損失も発生します。それを可能な限り小さくするために、開発にはアイシンが培ってきたノウハウと最新鋭の技術力を投入しました。油量を最小限化し、必要な部位には適切にオイルを導く油路を設置。さらに低粘度のハイブリッド製品専用オイルを新規採用しています。

また、コンピューターによるシミュレーション技術の活用とともに、スケルトンモデルも含めて実機テストに多くの時間を費やしました。要所に窓を設けて潤滑の様子を観測するなど、徹底検証を繰り返すことで、損失の少ない高効率設計を実現しています。」

図3.jpg

アイシンは、世界中に広がるお客様のさまざまなニーズにスピーディーに対応するために、HEV、プラグインハイブリッド車、電気自動車、燃料電池車の各種車両に向けた電動ユニットのフルラインアップで挑みます。そして、長年にわたり培った幅広い知見と、新技術の開発に向けた飽くなき探求心で、「クルマの電動化」をより一層加速させていきます。

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