電動化技術を磨く「レース用eAxle」開発への挑戦

2022.01.14

電動化技術を磨く「レース用eAxle」開発への挑戦

ハイブリッド車(HEV)や電気自動車(BEV)など、環境にやさしいクルマがさまざまなメーカーから発売され、最近は街でも頻繁に見かけるようになりました。こうしたクルマに使われる先端技術は、もしかしたら「モータースポーツ」の中で生まれたのかもしれません。

今回は、自動車技術の最先端を競うモータースポーツのひとつである、「WEC1」と、レースを通じて電動化技術に挑むアイシンの取り組みをお伝えします。

FIA世界耐久選手権(FIA World Endurance Championship)の略称

WECFIA世界耐久選手権)とは?

WECは、FIA(国際自動車連盟)が統括する世界選手権で、F12WRC3と並ぶ世界最高水準のモーターレースです。長時間かつ長距離を走行する耐久レースの最高峰とも言われており、勝つためには「速さ」だけでなく、長い時間を安全に走り切る「強さ」も求められます。

WECはシーズン中に8戦※4レースが開催されますが、中でも特に有名で重要視されているのが、フランスで行われる「ル・マン24時間レース」です。100年近い歴史と伝統を持つ最も過酷なレースで、これまでに多くの自動車メーカーが勝利を目指し、技術力を競ってきました。

2 FIA Formula One World Championship
3 FIA World Rally Championship
4 2020年、2021年は新型コロナウイルスの影響を受けて6戦に短縮

レースによって飛躍する技術開発力

自動車メーカーや部品メーカーが積極的にレースに参加する最大の目的は、技術開発です。レースでは限界に近い走行を長時間行うため、通常では起きないトラブルが多数発生します。新しい技術を試し、磨き上げる場としてはこれ以上ない環境といえるでしょう。これまでもレースの中で生まれた多くの優れた技術が市販車に生かされてきました。

また、レースに参戦するためには開発のスピードも早めないといけない。そのようなモータースポーツを起点としたもっといいクルマづくりのためにアイシンがレースへの挑戦を開始したのも、関心の高まる電動化技術をさらに鍛え上げることが目的でした。 

アイシンのレース用eAxle開発とWECの挑戦

アイシンのレース用eAxle開発は、2007年の「十勝24時間レース」から始まりました。eAxleとは、モーター、ギヤボックス、インバーターの3点を一体化した駆動ユニット。材料を含め設計を根本から見直し、0.1g単位までこだわり軽量化したリアトランスミッション用モーターをトヨタのスープラHV-Rに提供し、優勝に大きく貢献しました。

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 2008年からは、いよいよWECに向けたプロジェクトをスタート。プロトタイプレーシングカーとしてはトヨタ初となるハイブリッドカー「TS030」の開発に向けて、アイシンが担当したのはフロント用eAxleの開発でした。

フロント用eAxleは、モーター、ギヤボックス、インバーターをセットで開発し、スペースが限られたフロント部分に搭載できるようにしなければいけません。アイシンは、この開発に強みである一体化技術が生かせると考えました。またこの挑戦は、電動化時代を見据えた次世代技術の開発へつながるものでもありました。

アイシンは、度重なる失敗や困難を乗り越え、超小型・軽量ながら量産システムの10倍のパワーウェイトレシオ※5を誇る高効率なモーターシステムを実現させました。ところが、突然のレギュレーション変更によりeAxleの搭載がなくなり、戦線離脱を余儀なくされます。

しかし、その後も手を緩めることなく開発を続け、ついに2014年、アイシン製のeAxleが「TS040」に搭載され、WECデビューを果たすことになりました。

※ 5ユニット質量1kgあたりで出せるパワー(パワー/ユニット質量)

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 ル・マンの壁と悲願の優勝 

アイシン製のeAxleWECシリーズを通して力を発揮。「TS040」は、見事2014年のシリーズチャンピオンに輝きましたが、念願であったル・マンでは勝つことができませんでした。翌2015年に再チャレンジするものの、ライバルが大幅なパフォーマンスアップを図り、完敗に終わります。

この敗北を機に、アイシンは新技術を投入して新しいeAxleの開発に挑戦。
ここから数年は試行錯誤と苦難の連続でした。問題にぶつかるたびにチームで一体となり克服しますが、世界の壁は厚く、挑戦はことごとく跳ね返されます。アイシンはそのたびに改良を加え、新技術に挑戦するとともに、品質を徹底的に追求しました。開発は困難を極めましたが、この経験はアイシンの電動化技術を大きく飛躍させるものとなりました。

そして、ル・マン初挑戦から4年が経った2018年、トルク、パワー、品質ともにアップした新しいeAxleを搭載した「TS050」はレース序盤から終始安定した走りを見せ、ついに悲願であったル・マン優勝の栄光を勝ち取りました。

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その後2019年、2020年も「TS050」は圧倒的な強さを見せ優勝を勝ち取りました。2021年には新規定に沿った新しいマシン「GR010」が優勝し、ル・マン4連覇を達成。アイシンもその偉業に貢献することができました。 
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トヨタ「GR010


全世界でカーボンニュートラルの機運が高まる中、その手段のひとつである電動車両の需要も急速に高まっています。アイシンは、モータースポーツを通じて蓄積した技術を生かし、eAxleをはじめとする高効率、小型な電動駆動ユニットの開発を進めています。そうした新しい挑戦と技術開発を通して、カーボンニュートラルの実現をめざしていきます。

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