1. HOME
  2. 拠点情報
  3. Chief Project General Manager 挨拶

Tokyo Research Center

拠点情報

Chief Project General Manager 挨拶

Message

Tokyo Research Centerを開設して早や2年半が経ちました。我々AIラボラトリー*2は、“Frontier AI for Tomorrow”のスローガンのもと、「最先端AI技術の獲得」と「その社会実装への貢献」に取り組んでいます。

自動車産業が「100年に1度の大変革期」と言われて久しいですが、そうした中で我々は、現場の要求を的確に捉え、そこから主要な技術課題を抽出し、優れた技術をできる限り早く現場へ届けなければなりません。そのために私は、研究メンバー1人ひとりの「個人ビジョン」を大切にしています。個人に内在する本質的な課題意識とそれを解決するための戦略や戦術を結び付けたものが、私の考える個人ビジョンです。個人ビジョンが挑戦的であるほど現状とのギャップによる原動力が大きくなります。メンバー全員のこうした原動力を1つにまとめることができたとき、組織のポテンシャルは最大化します。

そこで導入したのが「ひと中心の未来社会とAI*3」という組織ビジョンです。組織ビジョンがあれば、メンバーの原動力が1つの方向へと揃います。ただこの組織ビジョンを達成するためには、信頼性、安全性、解釈可能性など従来AIに共通の品質リスクを払拭し、人間や社会に安心して受け入れられるようなAIをつくらなければなりません。我々は、国内外の著名な大学とも連携しつつ、この難題に挑戦しています。

  • 現在の取組みテーマ
    ・先端領域(信頼性): 3件(うち大学連携: 2件)
    ・先端領域(安全性): 1件(うち大学連携: 1件)
    ・先端領域(解釈可能性): 1件
    ・先端領域(その他): 1件(うち大学連携: 1件)
    ・応用領域(パワートレイン(電動化)): 5件(うち大学連携: 2件)
    ・応用領域(その他): 3件

“Frontier AI for Tomorrow”

 

2023年9月1日 Chief Project General Manager

 

 

*2: 先端AIラボラトリーは、先端研究のみならずパワートレイン(電動化)向け応用へも領域拡大を図り、「AIラボラトリー」へと改称しました。
*3: (参考)「OS-20 ひと中心の未来社会とAI」、2023年度人工知能学会全国大会(JSAI2023)オーガナイズドセッション。


東京・秋葉原に新拠点Tokyo Research Centerを開設して、おかげさまで1年が経ちました。Tokyo Research Centerにはいくつかの研究開発部門がありますが、そのうちの1つが「先端AIラボラトリー」です。先端AIラボラトリーでは20代後半から30代までの比較的若い研究者が大半を占めています。先端AIラボラトリーで主に取り組んでいる領域は2つあります。1つは「責任あるAI(Responsible AI)」、もう1つは「機械知覚(Machine Perception)」です。

責任あるAIは、公正さ(fairness)、解釈可能性(interpretability)、プライバシー、セキュリティをAIシステムに組み込むための最良の方法を検討する活発な研究分野です*1。現在Googleをはじめ多くの企業がそれぞれ独自に取り組んでいます。また広義で捉えると、責任あるAIは倫理的かつ法的な観点から人間中心のAIの在り方を具体的に示す枠組みです。近年この分野では、欧州のAI規制案、経済産業省のガバナンス・ガイドライン、国際的イニシアティブGPAIといった標準化の動きが盛んです。我々先端AIラボラトリーは、こうした責任あるAIを最新のテクノロジーで支えていきます。アカデミックかつチャレンジングな分野ですが、我々の取組みが産業界におけるAIの社会実装を劇的に加速させるものと信じています。

そして機械知覚は、古くから活発な研究分野の1つです。機械知覚は、人間の知覚の工学的な模擬を目指したもので、視覚、聴覚、味覚、触覚などを対象としますが、中でも最も身近なものは視覚でしょう。それらはパターン認識やコンピュータービジョンと呼ばれることもあります。AIすなわち人工知能も人間の知能を模擬するものですから、AIと機械知覚は密接に関連(少なからずオーバーラップ)し、お互いを発展させます。人間の視覚判断は非常に高度で洗練されたものです。人間は、対象物がどのくらいの距離にあるか、近づいているか遠ざかっているか、そもそも初めて目にする対象物でさえそれが何であるかを多くの場合に言い当てることができます。人間と同等レベルの機械知覚を実現することが我々の最終目標です。

なお、学会発表や論文投稿では手法の客観的評価が重視されるため、オープンデータを用いることがほとんどです。しかし社会実装においては、現場データを収集、分析し、それに基づきAIモデルを更新するまでのサイクルを何度も回すことが極めて重要です。ここに内製戦略のアドバンテージがあります。内製であれば、データ収集からモデル更新までのサイクルを早く、安く、そして多く回すことができます。一般に、サイクルの回数が多いほどAIの品質は高い水準で保たれます。
もちろんAI分野で成功するためにはオープンマインドが不可欠です。我々は大学、研究機関、他企業研究所との連携を積極的に進めており、様々な知見を我々自身の研究活動と有機的に結合させています。オープンマインドは現場においても大切です。我々は一定の完成度に達した技術を他部門へ移管し、その後のサポートも積極的に行っています。

今後は、量子コンピューティングやメタバースといった別の領域とAIをクロスオーバーさせ、従来の枠組みにとらわれない新たなバリューの創出にも取り組んでいきたいと考えます。

“Frontier AI for Tomorrow”

 

2022年4月1日 Chief Project General Manager

 

 

*1: 「機械学習デザインパターン―データ準備、モデル構築、MLOpsの実践上の問題と解決」、Valliappa Lakshmanan、Sara Robinson、Michael Munn 著、鷲崎 弘宜、竹内 広宜、名取 直毅、吉岡 信和 訳(オライリー・ジャパンISBN978-4-87311-956-4)