脱炭素が求められる近年、特に火力発電に依存する日本においては、消費電力を抑えることが重要となります。一方、IoT(Internet of Things)の普及に伴って、24時間稼働し続ける機械学習モデル(監視システム等)の需要が増えています。これら2つの社会的需要を満たすためには、低消費電力で駆動する機械学習モデルが必要となります。このような低消費電力な機械学習モデルとして、脳内のニューロン間のスパイク伝達の挙動を模したスパイキングニューラルネットワーク(Spiking Neural Network、SNN)が知られています。SNNは深層学習などで利用される従来のニューラルネットワークとは異なり、入力信号を時系列のバイナリ信号に変換して処理を行います(図1)。バイナリ信号を活用して演算を実施するため、SNNは加算演算のみで入出力関係を記述することができます。加算演算は乗算演算と比べて消費電力を低く抑えることが知られています[1]。そのため、SNNを活用すると、従来のニューラルネットと比較して、脳の挙動に近く、かつ低消費電力であるという利点が得られます。このように魅力的なSNNですが、時系列のバイナリ信号を扱う必要があるため、従来の深層学習モデルのような多層化が困難であるという課題があります。