ミクロン単位の加工精度を追求し型保全技術を世界に伝承
2025.12.23
アイシンの各工場には高い技能やスキル、信念を持った、「匠」と呼ぶに相応しい仲間がいます。
安城第1工場でモーターコアの金型保全業務を担当する鈴木は、唯一の「モーターコア型保全Sランク者」として主に不具合改善と人材育成を担当しています。
ゼロからスタートし研鑽の日々を重ねてリーダーに
アイシンに入社して10年目の鈴木は、プレス加工のオペレーターに携わったあと、5年前にモーターコアの金型保全業務を担う現在の部署に異動しました。モーターコアはEVやハイブリッド車の駆動等に使われる重要な部品で、薄い鋼板を積層してつくられミクロン単位の超高精度が求められます。

鈴木:配属されたときは右も左もわからず、本当に工具の使い方を教わるところから始まったんです。それからは、今に至るまで「どうすれば技術を身につけ、高めていけるのか?」を自分に問いかけ、常に工夫しながら取り組んできました。とは言っても、今も日々研鑽の連続です。
アイシンに2台しかない大型研削盤の操作にも精通現在、部署内で技術レベルのランクがS・A・B・Cとある中で、チームのみんなから唯一Sランクに認めてもらっているのも非常に光栄です。その名に恥じないよう、型保全にどんな大きな問題が生じても、「俺に任せろ」といつでも言えるよう、さらに上をめざし技術の向上に挑んでいます。
職場のリーダーとなってからは、仲間が働く環境にも目を配るようになりました。その一つが、大型精密平面研削盤の効率化です。効率を悪くしている要因を一つ一つチェックし、プログラムを丹念に調整して、約8時間掛かっていた研削時間を約4時間に半減させることができました。作業の手待ちも減って手間も時間も削減できたときは、心の中でガッツポーズしました。
「成長できる」と思ったら迷わず即チャレンジ!
鈴木: いつも自分の中で大切にしているのは、少しでも「成長できる!」と思ったら、経験がないことにも即チャレンジすることです。そうした気持ちでいると、不思議と新たなチャンスも巡ってくるので、積極的であることと熱意を持って仕事に向き合うことは常に意識していますね。
型保全の業務では息の合ったチームワークも重要 与えられた要望に対し、それより上をめざすことにも人一倍こだわっています。5ミクロンの精度を求められたら、「よし、2ミクロン以内に抑えるぞ」というように、自分自身が納得できる精度を追求することは技術を向上させてくれます。それは会社の信用にもつながりますよね。
また職場には上の年代の方もいらっしゃいますが、問題や提案について気軽に相談し合えるフランクな雰囲気づくりにもこだわっています。この部署は基本的に二人一組で作業をすることが多いので、普段から互いにコミュニケーションがとれる風通しの良さは、効率や安全面からも重要なんです。
課題の解決を機にチーム全体がステップアップ
デジタルマイクロスコープで部品に不具合がないかをチェック鈴木:印象深いのは、プレス加工の際、抜き落としたスクラップ(カス)が落下せずプレート上に戻り、不具合を発生させていたのを改善したことですね。詳しい原理は省きますが、プレートの表面に溝加工を施すことでこの問題が回避できるため、スクラップが上がる状況を観察・研究し、ヤスリを使い自分の手で髪の毛よりはるかに細いミクロン単位の精密さで300カ所ほど溝加工を施しています。この技術を修得してからは、問題の発生を非常に低いレベルに落ち着かせることができており、自分の記憶している限り加工ミスは1度もありません。
また、鋼板を積層してつくるモーターコアは、各鋼板の表面の欠けなどが不具合の原因となるので、デジタルマイクロスコープでチェックします。その精度を上げるためそれまで十分に性能を発揮できていなかった3D解析ツールを、皆が駆使できるようにしたことも印象に残っています。これにより、上面からの映像ではわからない欠けの深さなども確認できるようになり、現在はそれ以外のツールも駆使できるよう勉強に挑んでいます。
デジタルマイクロスコープによる3D解析を指導リーダーとして感慨深いのは、モーターコアの需要増に伴ってメンバーが急増するなか、型保全業務の経験がなかった仲間にも頑張ってもらい、苦労しながら技術集団に作り上げることができたことです。全員がワンチームとなって、仲間の成長を日々実感し合いながら自分も成長できたことは、大きな励みや喜びになっており、自慢のメンバーです。
技術で職場に貢献できることを誇りにさらなる高みへ
鈴木:現在、この職場を拠点として、次の新たな拠点が立ち上がる予定になっており、拡大するモーターコアのプレスマザー工場で現場のリーダーを担えていることは、大きなやりがいであり喜びです。
また、これまで生産準備や金型製作、号口生産、品質検査、監督業務を経験し、金型保全業務だけでなく、モーターコアプレス区のスペシャリストとして、職場に貢献できているのは自分の誇りになっていますね。
今後に向けては、女性のメンバーも入ってきているので、誰もが働きやすいダイバーシティ目線でチームを率いることがより大事になると思っています。自分自身については、「匠」と呼ばれるにはまだまだ若造ですが、技能やスキルをさらに磨き上げ、この職場にとどまらず新たな拠点や海外拠点にも伝承していけるようになるのが夢であり目標です。




