誰ひとり取り残さない!「YYSystem」でめざす誰もが自分らしく活躍できる社会

2024.12.19

誰ひとり取り残さない!「YYSystem」でめざす誰もが自分らしく活躍できる社会

2022年11月の記事で紹介した、聴覚障がいのある方のコミュニケーション支援アプリ「YYSystem(ワイワイシステム)」が、社会の多様な場へ広がりを見せています。着実にユーザーを増やしながら、202411月にはシリーズ累計で100万ダウンロードを達成。聴覚障がいのある方が安心して意思疎通ができる社会の実現に向け取り組みが進展しています。

そこで今回は、本アプリ開発のプロジェクトリーダーや事業推進メンバーに、ユーザーと共に進化してきた本アプリの歩みやそこに込められた想いを伺いました。

ユーザーに寄り添った開発で進化し続ける

YYProbe(ワイワイプローブ)」、「YY文字起こし」を始めとした音声認識アプリシリーズ「YYSystem」は、聴覚障害のある方や、加齢によって日常の音が聞きにくくなった方などの意思疎通を支援するために開発。スマートフォンやディスプレイパネルなどに、会話の内容をリアルタイムで表示することができます。

リリース以来、大きな支持を得ている「YYSystem」の大きな特長は、精度の高い音声認識ができることです。また、単に文字起こしができるだけでなく、周囲の反応や話者の感情、会話の雰囲気まで伝えられるよう工夫しています。

YYSystemスマホ画面イメージ

例えば、聴覚障がい者の方は会議で自分が発表などをしているとき、後ろで拍手されても気付けませんが、「YYSystem」を使用していれば、「パチパチ!」といった表示で見える化することができます。それにより自分の発言に対する反応を本人も周囲と共有でき、より深い意思疎通が可能となります。

さらに、ユーザー一人一人の「こんな機能がほしい」「こんなことで困っている」といった要望をSNSを活用して積極的に吸い上げ、柔軟かつ極めて迅速に反映する「共創スタイル」での開発を実現している点も大きな特長です。

開発プロジェクトリーダーの中村は「共創スタイル」での開発について、次のように話します。

「ユーザーとは日ごろからコミュニケーションをとり、ちょっとしたことでも気軽に相談してもらいやすい関係性を築いています。寄せられた要望から、会話のなかで笑いが起きたときに『(笑)』や『あはは』といった表現を表示する機能、AIを活用して長くわかりにくい話を要約する機能が生まれました。サイレン音を可視化・通知するアプリ『YYサイレンアラート』は、運転中に救急車やパトカーの『サイレン』に気づけず困った、という声からはじまり、ユーザーとともに機能をつくり上げました。この、ユーザーとの距離の近さが『YYSystem』を他のアプリと差別化する一番のポイントです。

共創することで、ユーザーからの支援・応援が得られ、それが事業収益へつながり、活動を継続することができています」

実践しているインクルーシブデザイン 図解

そんなユーザーとの「共創スタイル」が高く評価され、2023年には「グッドデザイン賞金賞」を受賞、2024年には世界中の優れたデザインを選定する「ゴールデン・ピン・デザイン・アワード」で「ベスト・デザイン・アワード」を受賞するなど国内外で高く評価されています※1

※1「ゴールデン・ピン・デザイン・アワード」は、1981年に台湾で始まった、世界中の優れたデザインを選定するアワード。2024年は、世界21地域から2,339点の応募があり、その中の642点が「ゴールデン・ピン・デザイン・アワード」を受賞。その中でも特に優れた作品として「YYSystem」を含む32点には、「ベスト・デザイン・アワード」が授与されました。

ゴールデン・ピン・デザイン賞 授賞式の様子

「『YYSystem』が皆さんの役に立つことで、私も自分がエンジニアでいる理由を実感でき、心の支えにもなっています。開発者として、ユーザーの生活を支えているつもりでいましたが、今はそれ以上に皆さんに支えられていると感じます」

YYSystem開発プロジェクトリーダー 中村正樹 写真

YYSystem開発プロジェクトリーダー 中村正樹

能登半島地震を契機にオフラインでも利用が可能に

さらに中村は、「YYSystem」を有事の際にもユーザーの安全や安心に寄り添えるシステムにしていきたいと話します。2024年1月に起きた能登半島地震では、地震発生後に中村のもとにユーザーから非常に多くの情報が寄せられ、地震速報の多くが音声だけの配信のため困っていることがわかりました。そこで、すぐにテレビの地震速報をインターネットで文字配信し、多くの聴覚障がい者に状況を伝えました。

加えて、個人ユーザーには利用に時間制限があったことから、中村は地震発生から1時間後に時間制限をすべて解除。「東日本大震災のとき、避難のアナウンスが聞こえなかったため津波の犠牲になった方も多かったと聞いていましたので、すぐに決断しました」と話します。

能登半島地震では、各携帯電話会社の電波が通じない時間帯も発生しました。このため中村たち開発陣はオフラインでも機能する音声認識エンジンの開発に全力を挙げ、202411月にリリース。今後はさらに自治体やNPOなどとつながることで、いざという時に備えるコミュニティをつくるなど、アナログな支援と組み合わせることで、テクノロジーではカバーしにくい所を補っていく仕組みづくりも検討しています。

めざすのはノーマライゼーション

一方、導入支援コンサルという立場で「YYSystem」と向き合っている日下は、聴覚障がい者への理解やコミュニケーションには、まだまだ課題があると指摘します。

YYSystem導入支援・コンサルチームリーダー 日下喜与美 写真

YYSystem導入支援・コンサルチームリーダー 日下喜与美

「ある職場から、聴覚障がい者の方が毎週木曜日に休むようになったという相談がありました。当初は原因がわからなかったのですが、よく話を聞いてみると、木曜日にある職場のミーティングについていけないのが原因だとわかりました。周りの同僚は発言者の口の動きでその方も内容を理解していると思っていたのが、実はそうではなかったのです。言葉を文字にすればリアルタイムに情報を伝えられ、話し合いに参加できるようになるのではと考え、『YYSystem』の導入を提案しました。すると、普段のコミュニケーションが円滑になっただけでなく、仲間と一緒に笑い合えたり、自信がついて新しい業務にチャレンジする意欲につながったりと、思っていた以上の効果がどんどん出てきました。 

これは職場の例ですが、社会にはそんな認識の違いや、困りごとを抱えた人が多く存在すると思います。私たちがめざすのは社会全体のノーマライゼーション※2です。より多くの人に『YYSystem』を使っていただき、ユーザーの声を丁寧に拾い上げながら、皆が楽しく共生できることが当たり前の世の中に近づけるよう、活動を進めていきます」

※2 障がいをもつ者ともたない者とが平等に生活する社会を実現させる考え方

社会の幅広い場面で便利に活用

「YYSystem」は文字起こしをするだけでなく、表示した文字を瞬時に20か国以上の言語に翻訳できます。そのことから、インバウンド需要で窓口での外国人対応が必要となっているホテルや駅の窓口といったお客様からの問い合わせが増えています。

法人への導入を担当している小澤は、コミュニケーションに困ったとき誰もが頼れるシステムとして「YYSystem」を根付かせたいと熱く語ります。

YYSystem事業推進グループ 小澤怜史 写真

YYSystem事業推進グループ 小澤怜史

「インバウンド需要の高まりにより、訪日外国人の方が増えています。ホテルや駅の窓口では英語に限らず中国語、韓国語といった多様な言語への対応が必要になり、コミュニケーションに関する困りごとが多く発生していました。システムを導入いただくことで、窓口のスタッフも、お客様も、ストレスなく快適に会話できるようになったと喜びの声をいただいています。『YYSystem』は障害の有無や国籍に限らず、コミュニケーションの壁を取り除くことができるシステムです。使っていただく皆さんとともに使いやすいシステムや運用方法をつくり上げていくことで、世界中の誰もが不自由なくコミュニケーションできる世界を実現していきます。」

2024年には大手ホテルチェーンの東急ステイ全店舗に、2025年には大阪・関西万博を控えた大阪阪急梅田駅に鉄道駅として本格導入されることも決まり、導入窓口が順次拡大する予定です。

YYSytem 東急ステイでの使用イメージ

これからも進化させながら世界の人々のために

最後に中村に、今後のビジョンや目標について聞きました。

AIなどの新しいテクノロジーを社会実装し、皆さんに使っていただくことで、コミュニケーションをはじめさまざまな社会課題の解決をめざします。世界には、聾学校がほとんどない国もあるんです。そういう国に生まれた人は、教育を受けられなかったり、貧しいのが決まってしまったりして、それって不公平ですよね。『YYSystem』はまさにそうした社会課題の課題に寄与するソリューションであり、皆さんと一緒に機能を高めながら、世界中の人に使ってもらえるよう展開していきます」

アイシンはこれからも、持続可能な社会への取り組みを推進し「取り残される人がいない安心、快適な未来」を実現していきます。

中村、日下、小澤談笑シーン

<YYSystemの詳細はこちら>
■ YYSystem公式ホームページ

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