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2021年04月01日

エントリーシステム開発プロジェクト

乗り降りをスムーズにする「エントリーシステム」で、 すべての人が快適に移動できる社会を。

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INTRODUCTION

一人ひとりが車を所有するオーナーカーから、多くの人が共用するシェアリングカーへ。その変化の流れの中で重要な役割を果たす「エントリーシステム」の開発が、ここアイシンで行われています。

Index

  1. 01
    技術革新の恩恵をすべての人に等しく届けるために
  2. 02
    各分野の専門家たちが力をあわせてつくりこんでいく

技術革新の恩恵をすべての人に等しく届けるために

―お二人が開発に参加している「エントリーシステム」とは一体?

M.Y:所有から利用へと人々の価値観が変わる中で、今後さらに拡大が予想されるMaaS車両に使われる乗降口のことです。広い開口部と2枚のパワースライドドア、路面と車内をスムーズにつなぐスロープから成り立っています。

 

― MaaS車両とは?

W.W:現在はクルマというと一般的に個人が所有するオーナーカーを指しますが、今後は1台のクルマを多くの人で共用するシェアリングが進むと予測されています。CASEの4領域のうちの「シェアリング&サービス」ですね。そんなシェアリング社会において、誰もが移動に利用できるだけでなく物流やケータリングなど、ヒト・モノ・コトに対応できる車両のことを広くMaaS車両と呼びます。

 

―なるほど。でも、モビリティ革命において乗降口がそれほど重要なのですか?

M.Y:考えてみてください。仮にこの先自動運転化により安全で便利な社会になったとしても、限られた人だけがその恩恵を受けられるのはおかしいですよね?私たちはこの技術的進歩を等しくみなさんに提供したい。その鍵のひとつが実は乗降口なんです。

― 確かに、一般的なバスなどは、車椅子を利用する方・ベビーカーを押す方などは、乗り降りしにくいですもんね。

M.Y:そうなんです。移動に不自由を強いられている交通弱者は増加傾向にあります。例えば、車椅子やベビーカーのまま乗車しにくいこと。快適な乗降ができないことが、課題なんです。

 

―そこを誰かが解決しなければいけないと。

M.Y:ええ。そうした役割を果たすために、2019年の7月にこのプロジェクトがスタートしました。現在も実用化を目指して開発中です。

W.W:これまでに展示会でのデモンストレーションなどはありましたが、社会実装への道はまだこれからといった感じですね。まずは運転手がいる車両向けシステムを開発し、その後、自動運転車への搭載を前提としたシステム開発に移行する予定です。

 

―先ほどスライドドアとスロープというお話がありましたが、もう少しシステムの詳細をお願いします。

M.Y:わかりました。まずは大きな開口部ですね。これにより車椅子を利用する方やベビーカーを押す方、足の不自由な方、お年寄り、大きな荷物を持っている方など、どんな方でも利用ができる車両にします。

W.W:この開口部を2枚のパワースライドドアで開閉し、車両下部から出るスロープによって介助なしの乗降が可能になるというもので、ドアもスロープも電子制御により自動化されています。

―開発にあたって重視したポイントは?

M.Y:もともとの開発目的が先ほどお話しした「交通弱者をなくす」というものですから、とにかく徹底的にユーザー目線に立った開発を心がけています。

 

―具体的には?

M.Y:そうですね、例えば、開発スタート時にバス会社へヒアリングに行きました。実際、乗客が乗降する時にどんな困りごとがあるかを知り、課題を明確化するためです。

W.W:開発中、実際に車椅子に乗ってみたこともありました。スロープの乗り降りを体感するためでしたが、わずかな傾斜でもかなりきついんです。腕力に自信のあるガタイのいい男でも、たった10度の傾斜で「無理!絶対登れない!」と悲鳴をあげるくらいでした。

M.Y:10度って、私たちが歩いて乗り降りする分には何も感じないほどのフラットさなんですけどね。こういう検証実験をもとにスロープの角度を設定していきました。

―やはり使う人の目線に立つことって大事なんですね。

M.Y:ええ、このプロジェクトを通じて改めてそのことを痛感しました。あとは、やはり自動車に搭載するものですから安全性は最優先です。とにかく事故が起きないもの、壊れないものをつくろうと。

W.W:それと使う時に怖さを感じない安心感にもこだわっています。

M.Y:そうですね。さまざまな局面で常に「本当にエンドユーザーのためになっているのか」を問い続けながら試行錯誤を繰り返しています。

各分野の専門家たちが力をあわせてつくりこんでいく

―では、お二人の担当領域についてお話をうかがいます。M.Yさんは機械系ですよね?

M.Y:はい。電動格納スロープの機構部品の設計を担当しました。乗り降りに使うスロープ部分と、通過時に横から落ちないようにするための壁を設置した構造物で、クルマの下のスペースに折り畳んで格納します。

 

―これを電子制御で動かすと。

M.Y:そうです。乗降時に自動で出し入れします。運転手がいる場合はドアとスロープ作動タイミングを人間が判断しますが、後々のセンシングによる自動化も視野に入れています。

 

――開発で難しかった点は?

M.Y:新しい構造と機構をつくるわけですから、部品も全部新規で設計しました。その点数が200点くらいあり、納期も決まっていたので、とにかく時間との戦いでしたね。

―200点全部!?

M.Y:さすがにモーターは現行のパワースライドドア用のものを流用するなどしていますが、機構部品はほぼすべて新規設計です。

 

―機構的な部分では、どこが新しかったのでしょうか?

M.Y:このユニットはクルマの下に格納されるのですが、乗り降りをスムーズにするためにはクルマ側の乗降口と同じ高さまでスロープを持ち上げなくてはいけませんよね?そのリフトアップする機構がこれまでになかったものなんです。

 

―そもそもクルマの下って、スペースないんじゃないですか?

M.Y:そうなんですよ。複雑な折り畳み機構を収めないといけないので、どうしてもスペースが足りなくなっちゃって・・・。

 

―薄っぺらい部品を使うわけにも行きませんしね。

M.Y:ええ、安全に使ってもらうためには強度も必要ですからね。そういったところを加味して形にするのが難しかった。ゼロから「こういう形状でこう動かしてみたらどうか」と考えながら、試作品をつくっては動かすというのを繰り返して改良を重ねた感じです。

 

―その他には?

M.Y:あとは、このスロープは単体ではなくパワースライドドアと連動して動くので、システム全体としての制御の難しさはあったと思います。

 

―このあたりはソフト技術者であるW.Wさんの担当領域でしょうか?

W.W:はい。確かにそのあたりの連携は難しかったですね。従来のパワースライドドアはドア1枚だけを動かすのに対し、今回のエントリーシステムはドア2枚とスロープがあるので、お互いの動きを考慮して設計する必要がありました。

M.Y:さっきのスロープとクルマのフロアとの段差をなくすという制御も、ドアが開ききっていないとできませんから。そういった動きの制約がある中で、ドアがやりたいこと、スロープがやりたいことを検討しながら、システム全体として一番いい動かし方を考えていきました。

―ご担当はドアとスロープを制御するソフトウェアの開発ですね。

W.W:ええ。今回は開口部に2枚のドアを設けて両開きにしていますので、ぞれぞれのドアの開閉と、スロープの出し入れを行う計5つのモーターを制御するソフトウェアです。

 

―制御ソフトを開発する上で、技術的に難しかった部分は?

W.W:作動時間です。当初は「まずこのパーツを動かして、次にこのパーツ」という具合に制御していたんですけど、そのやり方だとどうしても時間がかかってしまう。そこで動きを変えてみたり、複数のパーツを同時に動かしたりするなど、さまざまな工夫を凝らしながら、ドアが開いてスロープを出し終わるまでの時間を2~3秒程度縮めました。

 

―3秒!すごいですね。

W.W:やっぱり利便性のことを考えると、そこは外せなくて。ただ、ドアなどのパーツをあまり速く動かすと負荷も上がり、安全性の担保ができなくなるので、ユーザーの安全を守りながら作動時間短縮することが難しかったですね。今現在も「もっと縮められないか」という要望に苦労しています(笑)。

―ただ、こういう課題ってソフトの力だけでは解決できませんよね?

W.W:そうですね。だからM.Yさんが所属するスロープ開発チームと一緒に評価をしたこともあるんですよ。ソフトとECUを別々に開発するのではなく「こういう動きはできないか」「こういう形状にできないか」と話し合いながら、さまざまな角度から解決策を探っていくスタイルです。

M.Y:コロナ禍により今はリモートでの開発がメインとなっていますが、それまでは同じフロアでやっていました。何か相談事があれば互いに声をかけあう感じで。

W.W:さっきの作動時間の部分なんかは、本当に毎日やっていました。今日「ここをこうやってみよう!」と決めたら、翌日また集まって検証して、新しい課題を見つけて、また翌日・・・とか。ソフト・ECUに関係なく、みんなで膝を突き合わせてやっている感じですね。

 

―そういう開発ができるのも、御社らしい気がします。

W.W:そう思いますね。私が以前携わっていたパワースライドドアも、社内のさまざまな分野の技術者たちが連携して開発する機会がどんどん増えていますから。

M.Y:以前はメカならメカの設計をしていればよかった部分はありましたが、特にこのプロジェクトに参加して以降、知らないことが多すぎてびっくりしています。自分が担当するスロープだけでなく、ボデーの他の部分のことも考えながらやっていかないと、システムとして完成しませんからね。

W.W:今後のシェアリング社会に対応する革新的な製品づくりは、ひとつのテーマに対してソフト、ECU、制御などそれぞれの専門家が一緒に知恵を出し合うスタイルじゃないと難しいのではないでしょうか。

 

―各領域の専門家が社内にいるのは心強いですね。

W.W:こういう話を聞いていると、やっぱりメカの人ってすげえなって思いますけどね。部品をあわせこむ技術とか、匠の技を感じますよね(笑)。

M.Y:まあ、目に見えるものだからそんなに難しくないですよ。こっちからすると、目に見えない制御をやっているほうがすごいって感じますけど(笑)。

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Profile

  • M.Yさんのプロフィール写真
    M.Y
    ボデー先行開発部/2011年度入社
    大学では機械工学を専攻し、振動工学の分野で基礎研究を行う。入社後は内装部品の設計を手掛け、2020年4月より現在の先行開発部でMaaS車両向けの機械設計に携わる。
  • W.Wさんのプロフィール写真
    W.W
    ボデー先行開発部/2013年度入社
    大学では電気電子工学を専攻。地元愛知県で働きたいと考え、就活中に感じた「社員の人柄や雰囲気が自分にあいそう」という印象からアイシン精機(当時)を志望した。入社後はボデー部品の制御ソフト開発に携わる。