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2021年04月01日

世界最適調達プロジェクト

米中の貿易摩擦による危機を、「世界最適調達」で乗り越えろ!

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INTRODUCTION

米中貿易摩擦により、自動車づくりに関連する製品にも高い関税がかけられることに…。北米工場が利益状況悪化の危機に直面する中、その逆風に立ち向かう若い調達メンバーたちに話を聞きました。

Index

  1. 01
    「調達」で、業界動向や世界情勢に左右されない価格競争力を
  2. 02
    ものづくり視点で読み解く、アメリカが中国を牽制する理由
  3. 03
    世界各国のメーカーに直接連絡し、交渉を重ねていく
  4. 04
    ものづくりを、世界を、近くに感じる事務系職種

「調達」で、業界動向や世界情勢に左右されない価格競争力を

―今回の「世界最適調達プロジェクト」は、米中の貿易摩擦に関するものだと聞きましたが?

M.T:2017年に就任したアメリカのトランプ大統領が「国内産業を守る」ために、世界各国から輸入されるさまざまな品目に高い関税をかける方針を打ち出したんですね。特に中国に対する政策は強硬で、報復の応酬となり「貿易戦争」と呼べる状態に突入しました。この政策は大統領が変わった現在も継続されています。

 

―それが御社にどのような影響を?

M.T:私たちアイシングループはアメリカに多くの生産拠点を構えていて、それら工場でのものづくりに使う部品の多くを、中国からの輸入でまかなっています。今後そこに関税が適用される可能性が高まり、工場の利益状況が悪くなることが予想されたため、今回のプロジェクトが2020年9月に立ち上げられたというわけです。

 

―何パーセントの関税ですか。

M.T:20%です。

 

―高いですね・・・。今回みなさんに課せられたミッションとは?

M.T:関税が上がっても従来通り中国の仕入れ先メーカーから買った方がメリットがあるのか、それとも他国の違う仕入れ先メーカーに変えた方がいいのか。その検証と交渉を重ねながら原価低減を実現し、世界規模での最適なものづくりを実現することが私たちに期待される役割です。

―最適なものづくり? 関税対策だけではないということですか?

M.S:はい。もともとアイシンでは各国の生産拠点ごとに部品や資材の調達を行なってきたのですが、今後は日本がグローバルリーダーとなって世界の調達活動を取りまとめていこうと。そういう大きな流れの端緒となるプロジェクトです。

M.T:現在は米中間の関税問題にフォーカスして活動していますが、これは氷山の一角で、徐々に調達機能を本社に集中させていく予定です。各国がそれぞれバラバラな仕入れ先から買い付けていては効率が悪いですからね。

 

―だから「世界最適調達」なのですね。なぜ、今そのような取り組みを?

M.T:現在の自動車業界は、低炭素社会の実現を目指して従来のガソリン車から電気自動車へのシフトが加速しています。この動きにより自動車部品サプライヤーの国際競争はさらに激化することが予想され、価格競争力の向上が大きな命題になっているのです。

 

―なるほど、そのカギを握るのが「調達」という仕事なんですね。

M.S:はい。調達にもいろいろありますが、私たちは「部品調達」と呼ばれる仕事に携わっています。鉄やバネなどの塑性加工品、ゴム・樹脂などの化成品、さまざまな電子部品など、ものづくりに必要な部品を世界各国のメーカーの中からできるだけ安く買い付ける仕事で、「バイヤー」とも呼ばれます。

ものづくり視点で読み解く、アメリカが中国を牽制する理由

―現在、プロジェクトはどのあたりまで進んでいますか?

M.T:まだ2合目といった感じですね。関税が上がっても中国からの輸入を継続した方がメリットのある部品と、第3国からの輸入に変えた方がいい部品の仕分けがようやく終わったところです。

 

―20%の関税がかかっても、中国メーカーの方が安いということがあるんですね。

M.S:ええ。やはり中国のメーカーは圧倒的に安いですね。品質にも問題ありませんし。

S.M:私も世界各国のメーカーをあたっていますが、自分の担当している領域では全般的に中国メーカーが安かったですね。

 

―やはりそうなんですか。中国の強さの理由ってどこにあるんでしょうか。

M.T:中国は長年「世界の工場」として厳しい国際競争にさらされてきました。その結果、コスト面での強さはもちろん、品質面でも相当なレベルアップを果たしています。例えば、日本では大きなメーカーにしかない高価な検査装置があるのですが、中国では多くの企業が資金を投じてそういった設備を整えているんですよ。

M.S:以前は中国の製品は品質面で劣るというイメージを持たれることもありましたが、今はまったく違います。

 

―そういう猛烈な追い上げもあって、今回の貿易摩擦につながったと。

M.S:ええ、恐らくは。最近の中国の経済成長は、本当にアメリカに追いつきそうな勢いですからね。2年くらい前に中国に出張に行ったことがあったのですが、現場がすごくやる気なんですよ。「世界に勝つぞ」と。

S.M:中国は2015年から「中国製造2025」という国家プロジェクトを展開していて、政府が製造業全体を支援するなど「世界の製造強国の仲間入り」を強力に推進しています。こうしたグローバルな動向を把握しつつ、市場の行き先を読み解きながら、当社にとって最適な調達先を見つけていかないといけません。

 

―なるほど、世界最適調達と一口にいっても、そう簡単なことではないのですね。

M.S:はい。今回のような国際情勢にも左右されますし、実現までの道のりは険しいと思います。

世界各国のメーカーに直接連絡し、交渉を重ねていく

―今回のプロジェクトでは具体的にどのような活動を?

M.S:まず、中国からアメリカに送っている品番一覧をもとに、それぞれの部品の今の価格と、関税20%になった後とを見比べることからはじめました。

M.T:その品番と図面を見て「これなら日本のメーカーにも同じような部品があるぞ」とか「この部品はインドのメーカーで見たぞ」とか、そういった情報を社内外から収集しながら、低コストでつくれそうなメーカーを探して見積もりの提出をお願いしつつ、「もう少し安い価格でつくれませんか?」と交渉したりします。

 

―とにかく安いところを探すという感じですか?

M.T:もちろん最安値での購入は私たちの使命ですが、同時に当社が要求する図面通りのものがつくれるかという品質面も考慮しなければなりません。さらには開発過程で試作品の製作をお願いすることもあり、時間的制約がある中でそこに対応いただけるかどうかなど、いわゆる「QCD(クオリティ・コスト・デリバリー)」すべての情報を取りに行き、総合的に判断しています。

 

―でも、本当にその工場でつくれるかどうか、分からないですよね?

M.S:そうなんですよ。ですから例えば、今回もインドネシアのあるメーカーが圧倒的に安くつくれる事例があったんですけど、それは本当なのか、どんな理由なのかを深掘りします。材料が安いのか、人件費が安いのか、設備が安いのか、部品をつくる工程に工夫があるのか・・・。さまざまな面から調査をしていくんです。

 

―結局、そのメーカーさんはどうでしたか?

M.S:現地のスタッフを通じて聞き込みを重ねた結果、インドネシアの労務費が日本よりも低いことがわかったんです。国が違うと賃金や法律、商習慣なども違うので、そのあたりの背景を掴むことにも苦労しますね。

S.M:国や地域ごとに根づく文化や風習も考慮しながら、検討を進めています。

―そういう地道な活動をしながら、どこが最も適した仕入れ先なのかを見極めていくわけですね。

M.S:はい。「現地、現物、現認」を仕事の基本に置いている会社なので、本来は現地工場に出張して見に行くのがベストなんですけどね。今は新型コロナウイルスのせいでそれができないので、苦労しています。

 

―御社の要求に応えることが難しいメーカーさんとは、どんな話を?

S.M:こちらが提示した価格に「その値段では難しい」という返答を受けて、折り合いをつけることに苦労するケースも確かにありますね。過去に類似した部品をつくっていたので、同じくらいの価格でつくれるだろうと思ったのですが・・・。そういうときは上司に相談しながら、何故そこまで費用がかかるのか、ボトルネックはどこにあるのかを探りに行き、どうにか取引できる道を仕入れ先メーカーと一緒に考えたりもします。

 

―ひとつひとつの取引先を大切にされているんですね。もっとドライな関係かと思っていました。

M.S:そりゃそうですよ。仕入れ先メーカーは私たちにとって大切なパートナーですから。コスト面でやむなく他社に切り替えるにしても、どのような製品だったらお任せできるのか、どうやって取引を継続していくのかを考えるのも私たちの仕事なんですよ。特に当社との取引額が多い企業の場合は、経営に影響する事態になり得ることもありますので。

ものづくりを、世界を、近くに感じる事務系職種

―ちなみに現地とのやりとりはメールや電話で? 英語ですよね?

S.M:そうですね。新型コロナウイルスが流行する前はよく現地に行ったそうですが、今はそうした手段でのやりとりがほとんどですね。私も早く海外出張に行きたいです(笑)。

 

―そうか、S.Mさんはまだ入社2年目ですもんね。なのに、結構仕事を任されている感じですが。

S.M:任されて、時に失敗しながら、少しずつ仕事を覚えている感じです。今回のプロジェクトでも担当する品番が多くて、仕事が回らず困りました。でも、直属の上司であるM.Tさんがその都度助けてくれるので、なんとか乗り越えられています。

M.T:最近は成長が著しくて、当初は彼女が考えて出した結論に間違いも多くあったのですが、1年経って「確かにその通りだね」ということが増えてきたので、最近は安心して仕事を任せられるようになっています。

 

―それは頼もしいですね。最後に調達という仕事の面白さ、やりがいを教えてください。

M.T:購入部品の改善と原価低減に、主体的に取り組めることですね。自分の力で決断しなくちゃいけないことが多くて悩むこともありますが、決められることそのものが魅力といえます。

S.M:仕入先との交渉でWin-Winな妥結案ができた時に仕事の面白さを感じます。また今後も仕入先とコスト削減に向けて一緒に取り組んだり、いずれは途上国の技術力向上を図ることで、その国の経済発展に寄与したいと思っております。「魚を与えるのではなく、釣り方を教えよ」を地でいく仕事ですね。

M.S:事務系だと営業や人事・経理、法務、生産管理などの職種があるんですけど、この中で一番ものづくりの現場に行く機会が多いのが調達だと思うんですね。

 

―なるほど。事務系職の中で一番ものづくりに近い仕事と言えますか?

M.S:そう言えると思います。いいアイデア、いい設計図面があっても、いいものがなければつくれませんからね。実現したいものづくりに向けて、サプライヤーの方々や設計の人たち、工場の技術者たちと連携して動くことも多いんです。

 

―今後はグローバルリーダーとしての活躍も期待されていますしね。

M.T:クルマは世界中でつくられていますから、世界からお互いに最適調達をし合うという、この業種ならではといえるやりがいがあると思います。

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Profile

  • M.Tさんのプロフィール写真
    M.T
    第2部品調達部/2013年度入社
    趣味は海外旅行。学生時代に海外で働く日本人の姿に憧れ、グローバルに活躍できるチャンスの多いアイシンに入社。入社後は原価課に配属され、2020年1月に現在の調達部へ異動となった。
  • M.Sさんのプロフィール写真
    M.S
    第2部品調達部/2016年度入社
    経済学部卒。「数字を扱う企画系の仕事」という軸で就活し、アイシンの調達という仕事にたどり着く。入社後は希望部署に配属され、「諸外国の人たちと接する仕事がしたい」というもうひとつの望みも叶えた。
  • S.Mさんのプロフィール写真
    S.M
    第2部品調達部/2019年度入社
    高校生の時に紛争地域の映像を見てショックを受け、国際貢献の道を志す。大学ではNPOや NGOでの活動に参加し、途上国の発展に寄与できるグローバルメーカーへの就職を目指し、アイシンへの入社を決めた。