モビリティ分野

1超電導材料・応用技術

1)室温超電導をめざした高いTcを有す超電導材料の創出 ※Tc:超電導になる温度

超電導現象はTc以下で完全に電気抵抗がゼロとなる等の現象で、超電導現象を示す材料を超電導材料(もしくは超電導体)と呼びます。魅力的な特性を有す超電導材料ですが、Tcは低く、超電導材料を応用利用するには寒剤(液体窒素や液体ヘリウムなど)を用いた低温冷却が必要となり大きな課題となっています。そこで私たちは、冷却不要な“究極の超電導材料(室温超電導材料)” の開発を行っています。

創出超電導材料の結晶構造 銅酸化物超電導材料 鉄系超電導材料
創出超電導材料の結晶構造
銅酸化物超電導材料 鉄系超電導材料

近年の成果

新構造の超電導体これまでに70種以上の新超電導材料を創出
創出超電導材料の例:
Sr₂SrCu₂O4(OF)₂, Tc = 107 K
CaKFe₄As₄ , Tc = 35 K

現在の研究内容

新たな発想で新材料創出にチャレンジ
・軽元素を構成元素に含む新組成
・磁性体の超電導化

2)超電導応用商品の研究

超電導材料開発と並行し、過去に行った、超電導バルク磁石や超電導線材を用いたNMR用超電導バルク磁石や超電導モータ開発の経験をもとに、新たな商品の開発および提案を進めています。

開発例1):小型NMR分析装置用超電導バルク磁石

NMR分析装置ですが、強磁場発生に用いる超電導マグネットが大型で、設置等に制約があります。私たちは、形状を工夫した超電導バルク磁石”と“空冷冷凍機”を用いて、NMR分析装置を超小型化(1/10程度)しました。

開発例2):超電導誘導同期モータ

超電導モータ導入(電力利用効率化)による輸送機器のCO₂排出低減を目指し、小型超電導モータ開発をすすめて、世界で初めて誘導同期機による回転試験に成功しました。

2モビリティ(CASE)に対応する先端技術

私たちは日常生活でさまざまなものを光により“見て” います。しかし、私たちが感じることができない光、つまり見えない光も存在します。最近では、この見えない光を利用したモビリティの開発が進んでおり、例えば、衝突防止機能などに応用されることが期待されています。私たちは、この見えない光を感知する車載用センサの研究開発によりモビリティの新たな可能性を探求し、安全性と快適性の向上を目指しています。

1)見えない光を見る車載センサ技術:回折格子型SPR方式赤外分光センサ

イムラ・ジャパンの回折格子型SPR方式赤外分光センサは、シリコン基板に凸凹構造を作り、その上に金の薄膜を形成しています。この凸凹構造(回折格子)によって、特定の角度と特定の波長の光がセンサに入射すると、プラズモン共鳴(SPR)という現象が起こり、電流が発生します。この現象を利用して、センサに入射する光の角度と発生した電流値から、入射した光の波長成分を知ることができます(分光)。そして、このプラズモン共鳴現象は、見えない光である赤外光でも起こります。通常、シリコンでは赤外光を検出することはできませんが、凸凹構造と金膜の組み合わせによって起こる、この特殊な現象が赤外光の検出を可能にします。
このように「赤外光を検出し、波長を分析する技術」の研究開発により、見えない光を見る車載センサの開発へと繋げます。

動作原理