Product History

06

ブレーキ

「止める」から「快適を創る」へ。

理想のブレーキを追い続けて。

~シングルマスターシリンダーから

回生協調ブレーキシステム、そしてEMBへ~

Chapter 01

1948年 / シングルマスターシリンダーの生産を開始

愛知工業で生まれた、
ブレーキづくりの原点

 ブレーキは、ただ止まればよい装置ではない。ドライバーの思った通りに、確実に車を止める。その当たり前を支えてきたのが、アイシンのブレーキ技術である。

 その歴史は戦後間もない1948年、アイシンの前身である愛知工業で生産されたシングルマスターシリンダーから始まった。ブレーキペダルを踏んだ力を油圧に変え、タイヤへ伝える、「止める」という動きの根幹を担う部品だ。
 その後もアイシンは、安全要求の高まりに応え続けてきた。ブレーキを構成する一つひとつの部品を磨き上げ、ブレーキ製品の総合メーカーとしての技術を築いていった。
 1980年代に入ると、ブレーキはさらに進化する。電子制御技術の導入により、ブレーキは「止める」だけでなく、クルマの安定性や走行性能にも深く関わる存在となる。

 そして1990年代。自動車の歴史を変えるプロジェクトが動き始める。世界初の量産ハイブリッド車、初代プリウスの開発である。ここで突きつけられたのは、エンジン車用のブレーキが、そのままでは使えないという現実だった。そもそも、1~2トンある車両を停車させるためには大きな力が必要であり、ガソリン車のブレーキは、エンジンが空気を吸い込む際に生まれる負圧を使ってブレーキペダルを踏み込む力を増幅する。しかしハイブリッド車では、モーター走行中はエンジンが止まり、十分な負圧が得られない。
 さらに、ハイブリッド車には回生ブレーキがある。減速時にハイブリッドシステムのモーターで発電し、エネルギーを回収することで減速させるしくみで、燃費向上には欠かせない。一方で、その効き方はバッテリー残量や車速によって変化するため、従来のブレーキでは「踏んだ量と減速の感覚が合わない」という違和感が生じやすかった。
 このときにドライバーが感じる「踏み心地」や「止まり方の感覚」を、ブレーキフィールと呼ぶ。思った通りに減速が始まるか、踏んだ分だけ素直に効くか、そしていざというときに短い距離で確実に止まれるか──。そうした応答性も含めて、ブレーキフィールは安心して運転できるかどうかを左右する、極めて重要な要素である。しかし、違和感を抑えようとして回生ブレーキの使用を控えれば、そのぶん燃費向上の効果は小さくなる。燃費とフィールの両立という、新たな課題がそこにあった。

 こうした課題に対し、1997年、初代プリウスの発売にあわせて、トヨタ自動車が主体となり、アイシンとともに開発したのが回生協調ブレーキシステムである。減速時には回生ブレーキを最大限活用し、足りない分を油圧ブレーキで補う。これにより、自然な減速と燃費向上を両立し、電動車ブレーキにおける大きな一歩となった。

 その後、回生協調ブレーキはエスティマハイブリッドへと展開され、改良を重ねながら技術としての完成度を高めていった。2001年には、アイシン、デンソー、住友電気工業、トヨタ自動車が共同出資して、ブレーキ専業会社「アドヴィックス」が誕生。2代目・3代目プリウスの開発では、トヨタ自動車とアドヴィックスという新たな体制のもとで制御の精度が一段と磨かれ、システムは着実に進化していく。それでも、ブレーキフィールには、なお高められる余地があった。その進化に挑んだのが、次世代回生協調ブレーキシステム「AHB-R」である。

初代回生協調ブレーキシステム

初代回生協調ブレーキシステム

Chapter 02

2009年 / 次世代回生協調ブレーキシステム「AHB-R」の開発

次世代回生協調ブレーキシステムへの挑戦

 2000年代後半、三代目プリウスの大ヒットをきっかけに、ハイブリッド車は特別な存在ではなくなった。電動車は、誰もが日常的に運転するクルマへと変わっていった。

 回生協調ブレーキシステムは改良を重ねて進化してきたが、普及が進むにつれ、ユーザーから求められる水準もいっそう高まっていった。
 より自然で、より滑らかな減速フィール。エンジン車と変わらない安心感。電動車が日常のクルマとなる中で、ブレーキにもさらなる完成度が期待されるようになっていた。

 回生ブレーキと油圧ブレーキを組み合わせる回生協調ブレーキは、燃費向上に大きく貢献してきた。しかしその一方で、踏んだ量と減速の感覚が完全に一致しない課題も残っていた。より自然なブレーキフィールを実現するには、回生と油圧をこれまで以上に細かく、正確に制御する必要がある。

次世代回生協調ブレーキシステムへの挑戦

 さらにこの頃、衝突被害軽減ブレーキ(AEB)の普及が進み始めていた。危険を察知した瞬間、最短距離で止める。ブレーキには、これまで以上に高い応答性が求められるようになっていた。

 自然さと、瞬発力。燃費と、安全。すべてを、より高いレベルで両立させなければならない。回生協調ブレーキは確かに進化してきた。しかし、次の段階に進むためには、構造そのものを見直す必要があった。

Chapter 03

2010年 / ブレーキ全体構成の再設計

最短距離で止めるための挑戦

 トヨタ自動車とアドヴィックスによる共同開発チームは、これらの難題に挑むこととなった。完成車メーカーとしてクルマ全体を理解しているトヨタ自動車と、ブレーキの構造と制御を知り尽くしたアドヴィックス。両者は壁をつくらず、ひとつの部屋に集まり、図面を囲みながら徹底的に議論する「大部屋開発」と呼ばれるスタイルで開発に臨んだ。彼らがまず向き合うことになったのが「どうすれば、もっと速く、確実に止められるのか」という問いだった。

 ブレーキは、踏んでから効くまでの“わずかな時間”が性能を左右する。とくにAEBのようにクルマが自動でブレーキをかける場面では、その立ち上がりの速さが、そのまま制動距離の差になる。

 そこで見えてきたのがひとつの限界だった。現状のしくみでは、急ブレーキ時に必要な大量の油を一気に送り込む力に制約があった。ゆっくり止まる分には十分な性能だったが、瞬時に最大の制動力を立ち上げるためにはしくみを変える必要があった。

 では、どうすればいいのか。議論を重ねる中で、開発メンバーの視線は、ブレーキの内部構成へと向かった。回生協調ブレーキは、ペダルの力をそのまま機械で伝えるのではなく、一度電気信号に変えてから油圧を生み出す構造をとっている。だからこそ、電気系統に異常があっても確実に止められる、安全のための仕組みとして“別の経路”をあらかじめ用意しておく必要がある。

 この安全のためのしくみ自体は、これまでも備わっていた。ただし、それはあくまで「万一のための構造」として、通常時の構造とは分けて設計されていた。そしてここに、一つの気づきがあった。

 通常時に使っている仕組みでは、急ブレーキ時に一気に大量の油を送り込む力が十分ではない。一方で、非常時に使うために用意されていた機械式の大流量弁は、はるかに強い力で油を送り出すことができる。

だったら──この部品を、普段から使えないだろうか。

最短距離で止めるための挑戦

 大部屋での議論の中で、その発想が生まれた。安全のためだけに眠らせていた構造を、通常時にも生かす。それが実現すれば、ブレーキの立ち上がりは格段に速くなる。だが、それは単なる部品の入れ替えではなかった。安全用と通常用に分けていた設計思想そのものを組み直すということだった。制御ロジックも、油圧経路も、考え直しになる。構造はむしろ複雑になる。設計の難易度も一気に上がる。

 それでも、チームは前に進む決断をする。安全のためだけに使っていた機械式大流量弁を、通常制御にも組み込む。そのために、ブレーキ全体の構成を組み替えていった。速く止まれる仕組みは、理屈の上では見えてきた。

 だが、それを本当に狙いどおりに動かすことは、また別の難しさを伴っていた。

Chapter 04

2013年 / 大流量弁の開発

自然なブレーキフィールへの挑戦

 応答性という力強さを引き上げる目途はついたが、課題はそれだけではなかった。次に向き合ったのが、「踏んだ分だけ、思ったとおりに減速するか」という課題だった。電動車では、回生ブレーキの効きが刻々と変化する。その変化に合わせて、油圧ブレーキを瞬時に、しかも滑らかに補う必要がある。そのために欠かせないのが、ブレーキを動かすための大量の油を、高速かつ緻密コントロールできる部品である。ここで、再び鍵を握ったのが、前章で登場した“あの大流量弁”である。

 開発メンバーは当時をこう振り返る。

ブレーキフィールを良くしようと思うと、油圧の立ち上がりや抜けを、これまで以上に細かく、速く制御する必要がある。そのためには、大きな流量を扱える弁がどうしても必要だった。

 大流量弁にはいくつかの種類があり、どれを選ぶかで、ブレーキの立ち上がりの速さも、止まり際のなめらかさも大きく変わる。応答性と自然なブレーキフィール──その両方を左右する、いわば心臓部だ。
 当初、ある大流量弁が候補に挙がった。構造は比較的シンプルで、小型化もしやすい。性能も理論上は十分で、「これならいける」という感触もあった。

 しかし、量産を前提に検証を重ねる中で、より高い安定性と再現性が求められることが見えてきた。どんな条件でも、常に同じ動きを続けられること。それが量産部品に課せられる絶対条件である。そのレベルに届かせるには、大流量弁の設計を根本から見直すしかなかった。

 開発開始からすでに数年が経過し、量産まで残された時間は決して多くなかった。そう感じながらも、代わりとなる決定打は、すぐには見つからなかった。議論が行き詰まりかけたとき、技術者の一人が口にした。

これまで自分たちがやってきた油圧ブレーキの技術で、何か使えるものはないだろうか。

 そこで浮上したのが、スプール弁という選択肢だった。
 内部の金属ピストン(スプール)を左右に動かすことで油の流れを制御する方式で、安定して大流量を扱える。実はこの技術は、アドヴィックスが長年培ってきた油圧ブレーキの分野で使われてきたものであった。
 しかし、その選択は簡単ではない。構造を根本から変えるということは、それまで積み重ねてきた設計や制御ロジックの多くをやり直すことを意味する。成功の保証はない。迷いが残る中、背中を押したのが当時の技術役員だった。

とにかく物を作ってやってみよう。その中で解決すべき課題が見えてくるはずだ。

 この後押しを受けて、開発メンバーはまた新たな一歩を踏み出していった。

自然なブレーキフィールへの挑戦
Chapter 05

2017年 / 回生協調ブレーキシステム用スプール弁の開発

見えない0.1ミリに挑む ──技術者たちの総力戦

 スプール弁を使う。その判断が下されたとき、開発は前に進んだように見えた。安定して大流量が扱え、市場での実績もある。理屈の上では、ブレーキフィールの課題を解決できるはずだった。だが、実際に開発を進めると、すぐに別の現実が立ちはだかる。

 制御を担当する技術者の一人が、思わず口にした。

ねらったブレーキフィールをつくるには、スプールの位置を0.1ミリ以下の精度で制御しないといけない。髪の毛よりも細い世界だぞ。……本当にできるのか?

 しかも、スプールは金属に覆われており、その動きは外から見えない。構造上、位置を測るセンサーを取り付けることもできなかった。つまり、見えないものを、髪の毛1本分の精度で動かす、という無理難題に挑んでいたのである。

最短距離で止めるための挑戦

 開発者たちはまず、これまでの設計データをかき集め、「中で何が起きているのか」を推測するところから始めた。実際に内部の動きを見ることはできない。だから、計算によって動きを予測し、その予測をもとに制御の仕組みを組み立てていくしかなかった。
 理屈の上では、動きは説明できる。だが、その正しさをどう証明するかに苦戦していた。
 
 突破口はそんな行き詰まりの中から生まれる。それはある開発者がふと口にしたアイデアであった。

スプール弁の一部をアクリルで作り、内部の動きを外から見えるようにする。そこにレーザーを当てれば、スプールの動きが測れるはずだ。

 一瞬、場が静まり返った。突飛にも聞こえる発想だったが、他に有効な手立てがない以上、やるしかない。そうしてチームは、この方法に賭ける決断を下した。
 アクリル製の試作モデルをつくり、レーザーでスプールの動きを測定する。そこで得られた位置データと油圧のデータを照らし合わせ、予測が正しいかを一つひとつ確かめながら、制御の精度を高めていった。むろん膨大なデータの収集が必要だが、不可能ではない。

 一つを詰めれば、別の課題が顔を出す。それでもチームは、調整と検証を粘り強く繰り返した。こうして、見えないスプールを制御する技術は、少しずつ、しかし確実に形になっていく。この技術こそが、「AHB-R」と呼ばれる次世代回生協調ブレーキシステムの中核となった。

Chapter 06

2022年 / AHB-Gの開発と展開

切り開いた技術を、次の「標準」へ

 2015年、ついに完成した次世代回生協調ブレーキシステムAHB-Rは、4代目プリウスに搭載された。ブレーキフィールと安全性を高い次元で両立したこの技術は、2017年には自動車技術会賞の技術開発賞受賞という高い評価を得る。

 しかし、開発者たちは立ち止まらなかった。時代の移り変わりとともに、電動車は、高級車からコンパクトカーまでより多くの車種へ、より幅広い価格帯へと広がっていく。
 次に求められたのは、この技術をどう広げるかという問いだった。そこで生まれたのが「AHB-G」である。

AHB-R

AHB-R

 AHB-Gは、AHB-Rで培った技術を土台に小型・軽量化を進め、より多くの車に使える回生協調ブレーキシステムへと進化した。さらに、自動運転時代を見据え、万一の故障が起きても止まれるよう、安全を二重に支えるしくみを強化した。あわせて、前輪と後輪のブレーキをそれぞれきめ細かく制御できる新機能を搭載。止まる瞬間にクルマの前のめりを抑えたり、停止直前の「カクン」とした揺れをやわらげたりすることが可能になった。その結果、安全性だけでなく、乗っている人がより自然でやさしく感じられるブレーキへと進化している。

 そしてこのAHB-Gは、将来のブレーキ技術の中核となる新しい高精度モーター(ブラシレスモーター)を初めて採用したシステムであり、アドヴィックスが企画から量産までを主導した、初の回生協調ブレーキシステムでもあった。AHB-Rで切り開いた道を、AHB-Gで広げる。回生協調ブレーキシステムの技術は、次の世代へと確実につながっている。

Interview
AHB-R開発者
“解”は必ずあると信じ、
原理原則を突き詰めよ。
株式会社アドヴィックス 車両適合技術部
西尾彰高

 AHB-Rの開発は、正直に言って簡単な仕事ではありませんでした。フェールセーフ構造をどう成立させるか悩んだときも、開発の途中でスプール弁に切り替える決断をしたときも、「本当に間に合うのか」「そもそも実現できるのか」と疑心暗鬼になる場面は何度もありました。
 理屈では必要だと分かっていても、それをどうやって量産レベルで成立させるのか、明確な答えは誰も持っていなかったのです。
 そうした中で私が強く感じたのが、「“解”は必ずあると信じて取り組むこと」の大切さでした。分からないからといって立ち止まってしまえば、前には進めません。一度立ち止まったとしても、原理原則に立ち返って考える。油圧はどう動くのか、なぜこの挙動が必要なのか。そこまで分解していくと、必ず次の一手が見えてきます。

 もう一つ大きかったのが、一人で抱え込まなかったことです。大部屋開発の中で、それぞれの立場から率直な意見がぶつかり合いました。議論は厳しかったですが、その分、視野が広がり、自分一人ではたどり着けない“解”に近づくことができました。
 今、仕事で暗いトンネルの中にいる人もいるかもしれません。でも、原理原則に立ち返り、仲間と議論し続ければ、必ず出口は見つかる。AHB-Rの開発が、それを教えてくれました。

AHB-R開発者

※所属は取材当時のものです

Chapter 07

2020年~ / 次世代型ブレーキ「EMB」の開発

次の進化を見据えて──EMBという選択肢

 回生協調ブレーキシステムは大きな進化を遂げた。しかし、開発者たちの視線は、すでに次の時代を見据えていた。
 長く開発に携わってきた技術者は、こう語る。

もっと違和感のない、安心できるブレーキの可能性は、まだ追求できるはず。メンテナンスの手間やコストも、いま以上に減らせる余地がある。未来のクルマづくりを考えたとき、常識に縛られない止め方やクルマづくりの選択肢を、もっと広げられないか。

 そうした次の時代の要求に応える技術として、研究が進められているのがEMB(Electric Mechanical Brake:電動ディスクブレーキ)である。

 EMBは、従来のように油圧でブレーキを動かすのではなく、電気信号でモーターを直接動かし、各車輪にブレーキ力を生み出すしくみだ。

 油圧を使わないことで、ブレーキの反応はより速く、より正確になる。また、配管が不要になることで、クルマの設計の自由度も大きく広がる。室内空間を広く取ったり、デザインの制約を減らしたりすることも可能になる。さらに、四つの車輪をそれぞれ独立して制御できるため、止めるだけでなく、曲がるときや安定性の向上にも貢献できる。安全性、快適性、そしてクルマづくりそのものにまで、影響を与える技術である。

 しかし、油圧による制御をなくすという大きな転換は、簡単ではない。その挑戦を支えているのが、回生協調ブレーキシステムで培った電子制御の技術だ。ペダルの踏み方を信号として正確に読み取り、四つの車輪に「どれだけ効かせるか」を滑らかに配分する。その考え方と制御の積み重ねが、EMBの開発に生きている。

EMB

EMB

Chapter 08

2025年~ / 電動化、知能化に向けて

安全を譲らず、進化を止めない

 アイシングループのブレーキ開発の歴史は、回生協調ブレーキシステムという大きな転換点を経て、次世代ブレーキの可能性の一つであるEMBへとつながった。その歩みの中で、ブレーキは単に車を止める装置ではなく、安全性や操作感、さらには車両の動きそのものを支える存在へと、その役割を大きく広げている。

 回生協調ブレーキシステムで培われた電子制御の考え方。油圧と電子制御を組み合わせてきた知見。量産を前提に、安全性と信頼性をつくり込んできた経験。それらはすべて、次の時代のブレーキへと確実に受け継がれている。

 開発に携わる技術者は、こう語る。

新しい技術に目が向きがちだが、本当に大事なのは、それをどう安全に、どう使いこなすかだ。これまで安全性と信頼性を徹底的につくり込み、時間をかけて向き合ってきた。長年の積み重ねがあるからこそ、安全だけは、決して妥協できない。

 電動化と知能化が進むこれからの時代、ブレーキに求められるものは、さらに高度になっていく。路面の状態を瞬時に読み取り、その状況に合った止まり方を選ぶこと。あるいは、乗っている人の状態に寄り添い、やさしく減速すること。ブレーキは、ただ車を止める装置ではなく、クルマに乗る時間そのものを、より心地よいものへと変えていく存在になろうとしている。

安全を譲らず、進化を止めない

 守るべき安全は、決して譲らない。その一方で、変えるべきものは、恐れずに変えていく。
 理想のブレーキをめざす挑戦は、これからも続いていく。ブレーキという技術を通じて、安全で、快適な移動の価値を提供するために。

Interview
EMB開発者
EMB開発者

※所属は取材当時のものです

先輩方の“解”を、
次の時代へつなぐ
先行システム開発部
増田芳夫

 開発に難題がつきものなのは、今も昔も変わりません。ただ、私が大切にしているのは、それにどう向き合うかという姿勢です。
 AHB-Rの開発で、先輩方と共に多くの壁にぶつかりながらも、原理原則に戻り、試行錯誤を重ねて“解”を見つけてきました。その結果だけでなく、そこに至るまでの考え方や判断の積み重ねこそが、いちばんの財産だと思っています。

 後の世代は、その経験をただ受け取るだけでは意味がありません。なぜその選択をしたのか。
 なぜその方法にたどり着いたのか。プロセスを理解し、自分の中に落とし込むことで、初めて次の開発に生かすことができます。
 EMBの開発でも、答えが最初から用意されているわけではありません。だからこそ、先輩方が実践してきたように、物事を多面的に見つめ、原理原則に立ち返りながら進めて行きたいと考えています。
 技術は進化しても、課題に向き合う基本は変わらない。先輩方が残してくれた“解”の積み重ねを土台に、次の時代のブレーキを形にしていく。それが、私たちの役割だと思っています。

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